EDDIE

幸せへのまわり道のEDDIEのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
4.0
“感情の抑制”“赦すこと”の難しさ。心に傷を負う記者が名司会者フレッド・ロジャースの取材を通じて問題に向き合う人間臭さは愛おしさすら感じさせる。人格者であるMr.ロジャースを演じるのはトム・ハンクス以外あり得ないと思わせられる名演。

なんとなくありきたりな内容なんじゃないかなと観るか迷っていた作品ですが、トム・ハンクス映画にハズレなしを信じて鑑賞したら凄く良かった。

実在の名司会者Mr.ロジャースことフレッド・ロジャース。私は本人のことを存じ上げていませんが、トム・ハンクスが「きっとこういう人なんだろうなぁ」というリアリティあるぐらいに役作りをしていて、特に子供向け番組の司会者ということで歌唱シーンもあるんですが、それが実に見事なんですね。
まるで聖人のように取り上げられるMr.ロジャースですが、彼にも苦悩はあったようです。誰にでも優しく接し、子供好きのように振る舞う彼ですが、実は素の彼は短気だとか。そして感情のコントロールを上手く行っているんですね。有名人だからこその家族との接し方で溝があったりと、特に長男次男とは問題もあったようです。

しかし、本作のメインパーソンはマシュー・リスが演じる新聞記者のロイド・ボーゲル。記者としての仕事に誇りを持っており、妻と子供もいて満たされた日常を送っているはずでした。
ただ彼には父親との確執という避けては通れない問題を抱えていたのです。それが姉の3回目(!?)の結婚式の場で問題勃発してしまい、そこから妻とのすれ違いが起こったりと順風満帆にはいかなくなるんですね。

そこで抜擢されたのがフレッド・ロジャースのインタビュー。政治記者である彼はエンタメ業界の司会者の取材ということで難色を示しますが、彼の短気な性格が災いして取材NGが出ている現実があり、仕事を選べる状態ではありませんでした。
渋々受けた仕事でしたが、彼とは正反対に人々と明るく笑顔で振る舞うロジャースの内面が気になって仕方がありません。
ロジャースの取材を重ねるにつれて2人の絆が深まっていき、ロイドは徐々に自分の問題と向き合うようになっていきます。

どんなに父に対する恨みがあれど、老いて人生の先が見えている父の死を前向きに捉えられるほど人間は腐っていません。
そんな父ジェリーも自身の過去の過ちを悔い、息子とやり直そうと問題に向き合おうとしていたわけで、大人になりきれないロイドの方が頑固で色々と難しいわけです。
Mr.ロジャースの出会いは確実にロイドの人生に大きなきっかけをもたらしました。
最終的な着地点も含めてとても素敵な作品だったと思います。

また場面転換のたびに映し出されるミニチュアセットが製作陣の努力が見えてとても心に残りました。セットの一つ一つにも拘りが見て取れ、細かい部分まで楽しむことができた作品です。

ちなみにロイドの父ジェリーを演じたクリス・クーパーが歌うシーンがあるんですが、めちゃくちゃ歌が上手くて驚きました。特に印象的なシーンでした。

※2020年劇場鑑賞103本目
EDDIE

EDDIE