たく

幸せへのまわり道のたくのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
3.8
売れっ子雑誌記者のロイド・ボーゲルが、人気子ども番組司会者のフレッド・ロジャースに出会うことで自身が抱える心の抑圧と向き合っていくという実話を基にした話。地味ながらトム・ハンクスの抑えた演技にジーンときたね。
話の全体がMr・ロジャースが司会を務める人気番組の中で進行する一つのできごとみたく描かれる演出が洒落てた。

ロイドが子ども時代の母親との死別をきっかけにキレやすい性格になってて、父親に殴り掛かるシーンが怖かった。いわゆるアンガー・コントロールの話で、フレッドも本当は短気なんだけど訓練によって怒りの抑制を獲得したという話に、「ストーリー・オブ・マイライフ」でジョーの母親が同じく短気なんだけど忍耐を獲得したっていうくだりを思い出した。
フレッドがインタビューを引き受けたのは、ロイドが書いた記事を読んで彼の心の抑圧を感じ取り、他人事じゃないと思ってあえて自分から仕組んだんじゃないかと思えたな。

凄いのが、心の解放の訓練の一環として「愛されたことがある人を思い浮かべる1分間」をやるシーンで、最初フレッドがロイドを見守ってるんだけど、その後にフレッドのアップとなって視線がジーっと観客の方に向いて第四の壁を破ってくるのがドキっとしたね。もし観客の中で同じ苦しみを抱えている人がいたら、一緒にやってみようって呼びかけてる感じで。
ロイドの奥さんや父親のジェリーを支える女性が彼らを見捨てず見守る姿に、やっぱり女は強いと思わせた。
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