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ユピテルとイオのblackcandyのレビュー・感想・評価

ユピテルとイオ(2017年製作の映画)
4.0
ナウシカが腐海(汚染区域)を調査しているようなシーンから始まります。
研究所には、バックミンスター・フラーが発明したジオデシック・ドームの温室があり、エクソダス号で荒廃した地球を旅立った人類へ父である博士が送ったメッセージは、フラーが提唱した宇宙船地球号を彷彿させます。

様々なSF作品にあるディストピア世界の設定を少しずつ用いて、誰もに「あの作品に似てるかも」と類似性を思わせる世界をあえて作り、そのSF映画としてはありふれた終末世界に、過去の神話や思想家、発明家、科学者、数学者、哲学者、音楽家、詩人、色んな偉人たちの美しい地球へのメッセージと言える提言や作品を化石のように散りばめてある。

たぶんこの映画は、地球の歴史の宝物探しのようにその偉人たちの化石を拾い集めて楽しむ映画なんじゃないかな?
そして、このまま人類が地球を消費し続けていたら、誰もが遠くない未来に起こりうるだろうと想像に難くないこの映画のようなありきたりなディストピアが本当に訪れてしまうことを危惧し、美しい地球へのメッセージを埋もれた化石にしないように警鐘しているんだと思います。
博識な人なら多くのメッセージを読み取れるんだろうけど私には難しかった。

サムはノワックの進化の方程式が一番のお気に入りと言い、人は変われると言いました。
バックミンスター・フラーは化石資源を燃やし続け消費する愚かさを説き変革を求めています。

ラストでサムがエクソダスに乗らずに浜辺で未来の象徴である子どもと本当に待っていることは、人間の欲望によって地球を食い潰したあげくに見限って他の惑星に生き残る道を探した愚かな末路の人類が戻ってくることではなく、現代の私達人類が既に宇宙でもっとも優れたそして唯一の宇宙船地球号に乗っているんだと早く気付いて、ディストピアになる前に変わることを未来の浜辺で待っているんだろうなと思う。
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