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殺さない彼と死なない彼女のbadhabitのネタバレレビュー・内容・結末

殺さない彼と死なない彼女(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

言葉を額面通りに受け取るところがある。
知識でも経験でも、言葉が全て本心とは限らないことは知っている。「嫌い」は「好き」で、「帰って」は「傍にいて」で、「さようなら」は「また会おう」な時があるというのは理解はしているし、自身も若い頃にはきっとそんな駆け引きをしていたと思う。
けれど年齢を重ねるにつれ、相手の意図を考えることに疲弊し、深読みするのが面倒になり、いつしか言葉をそのままの意味に受け取るようになっていたし、自分自身でも裏面のある言葉を使わなくなった。
「嫌い」は「嫌い」で「さよなら」は「さよなら」だ。正しい意図で言葉を使うようになった。

若さゆえに、言葉に素直な気持ちを載せられない小坂と鹿野は、それでも互いの態度で行動で距離を測っていた。その不器用な関係の築き方が愛おしい映画だった。
「殺す」は「生きて」で「死にたい」は「あなたの隣で生きたい」だ。

元々世紀末さんの原作漫画が好きだったが故に、実写化にはあまり肯定的ではなかったが、Twitterやフィルマークスの評判が良かったので観てみようと思った。
結果、観て良かった。2010年代のベストに入るぐらい好きな作品になった。
ありがちな青春恋愛映画だと思っていたし、実際にその側面があることは否めない。説明過多のモノローグや、邦画にありがちな脚本や、漫画の台詞そのままの口調や、ツッコミどころは多々あれども、それをいちいち気にかけることが野暮に思うほど名作だった。

正直、中盤の八千代くんの回想シーンからずっと泣いていたので、鹿野の夢の中での会話は最早何故泣いてるのか自分でもわからなくなっていた。
撫子ちゃんの純粋で真っ直ぐな告白を八千代くんと共に追体験するほどに、胸を「尊い…」という気持ちが満たしていった。
素直な言葉も、素直じゃない言葉も、好きな台詞がたくさんある。原作にあったエピソードが出てくると嬉しくなってしまった。

時系列のギミックにも全く気付かなかったな。

因みに原作はきゃぴ子推し。
しかし何故きゃぴ子を本名の設定にしたのだろうか、そこだけは気になってしまった。

次回は是非ミカコとキョーちゃんを映画化して欲しい。
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