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盆唄のniutsuのレビュー・感想・評価

盆唄(2018年製作の映画)
4.0
江戸時代の伊達藩のエリアで、東日本大震災はありました。江戸時代の災害や維新後、困窮を極めた東北の状況があって、ハワイ移民もあったし、原発も作られている。数えきれない困難とそれに打ち勝ち、命をつないできた日本人への賛歌となっていた。

また、登場した方たちの多くが電気や電力にまつわる仕事をしていたのが原発のお膝元、双葉町らしかった。

仕事の少ない土地に原発がやってきて、貧しかった父親が原発で働き、自分は電気工事の会社を作り、豊かになった。原発と電気に生かされもし、殺されもした人生の悲しさがきちんと映っていたと思う。

同じように放射性物質が降ったエリアでも、帰還困難区域でないために補償されず、避難先で困窮を極める人たちもいる。それに比べれば、彼らは、物質的には困ってはいない。でも、故郷を失うというのはお金ではない。魂の殺人だ。

帰還困難区域で太鼓を叩いたとき、横山さんの魂が戻ってきた気がした。これは、魂の復活のお話。人間は、絶望したときに死ぬんだと思う。横山さんは、太鼓を叩いて、先祖だけでなく、自分自身をもあの世から呼び戻し、黄泉の淵から帰ってきたのだ。

監督やプロデューサーが時々登場するのも、彼らの働きかけで、横山さんたちが少しずつ変わってきた、進んできたことが映っているんだと思う。盆唄の復活は、横山さんたちにも、少しずつ、少しずつ見えてきた希望なのだ。

カッコいい横山さんだから、被災者としてでなく、太鼓の名手として映るから、本気になった。双葉のほかの男たちも、そうなんじゃないだろうか。女たちも、そんな夫たち、息子たちを見て、元気になっていく。

資料的な価値も高く、名作だと思います。復興は、箱物を作ることじゃない、土地に戻ることでもない、魂を取り戻すことだと教えてくれる。

福島の子どもたちに見てほしいです。諦めずに、いつか戻ってほしい。
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