朝田

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへの朝田のレビュー・感想・評価

3.7
アウトローな男が、ミステリアスな女の姿を追い求める。「アンダーザシルバーレイク」やヒッチコック、リンチの作品にも近い、土台は所謂フィルム・ノワールの世界観だ。しかし、今作はそれをNWレフンやウォンカーウァイを想起させるネオンカラーを基調とした鮮やかな色彩感覚の映像、そして、前半は長回し主体の撮影と後半はワンカット、しかも3Dと撮影形態と時空が変化するというトリッキーな手法によって、全く新しい作品に仕上げている。通常そういったトリッキーなスタイルの映画は、その形式が全てのような作品になってしまいがちだ。しかし、本作は細部まで作り込まれた異様なセットや小道具、ノスタルジックなムードをもった音楽と映画的な工夫が詰まっているのが素晴らしい。単に目先の面白さだけでワンカットにしているのではなく、後半部のエクストリームな空間の中をさ迷う主人公により没入できる、という演出上での意図が感じられる。映像は光と影の塩梅が絶妙で、車を洗浄するシーンや、取り調べ室で面会するシーン、ゲームセンターで遊ぶシーンなどよくある場面が、どこか近未来的な雰囲気すら帯びたものになっている。空間の見せ方が新鮮だ。そのため後半のワンカットも全く飽きない。正直一回見ただけでは全貌が掴めず、煙に巻かれたまま終わってしまった感覚はあるが、ビー・ガンという新たな才能を祝福したい。あらゆる作品が溢れる現代の映画界においても、まさに異色という言葉がよく似合う怪作。
朝田

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