ツクヨミ

キングスマン:ファースト・エージェントのツクヨミのレビュー・感想・評価

4.0
マシュー・ヴォーン監督、これは"1917"に感化されたのか?
1914年セルビアを訪問したフェルディナンド大公が暗殺される事件が発生、第一次世界大戦が勃発し英国貴族オックスフォード公は戦いに巻き込まれていく…
マシュー・ヴォーン監督作品。キングスマンシリーズ第3作目、今回は前2作とは打って変わって第一次世界大戦の時代を背景にキングスマン組織の誕生秘話を描く。今作は過去編ということもあり前2作と比較するとユーモアとオシャレ感がかなり抑えられシリアスな戦争要素が強くテイスティングされていた。なのでキングスマンとしてこれはどうなんだという雰囲気ではあるが、時折挟まる下ネタやユーモア、戦闘シーンでの音楽の使い方はしっかりキングスマンでマシュー・ヴォーン味◎。最後のストーリー展開は実にキングスマンっぽくて良かった。
そして今作はキングスマンであると同時に歴史裏側ものとして面白かった。それはジョージ英国王やラスプーチンなど実在の人物を出していたこともあるが、前半における巧みな編集力にあると思う。当時のイギリス、ドイツ、ロシアの微妙な関係性を戯画化して説明したり、小道具を使ったマッチカットの多様によるスピーディーなストーリー展開の運びは実に見事で、短い時間で当時の世界情勢がまるごとわかってしまうのだ。もはやこれからのキングスマンシリーズは世界史を順に追ってほしいと思うほど見事な世界史裏側映画だった。
また今作は第一次世界大戦を下敷きに敷いており物語の核として重要なものだったのは間違いない。それも中盤での戦場での泥臭い救出劇はサム・メンデス監督作品"1917 命をかけた伝令"を彷彿とさせる映像美であった。そしてラストの戦争フィルムを背景にした見せ方はピーター・ジャクソン監督の"彼らは生きていた"というドキュメンタリーに影響受けてそうだと色濃く感じる要素。
キングスマン過去編として実に面白く歴史大作としてもかなり興味深い作品になっていた。あわよくばキングスマンはこの作風で続けてほしい。
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