ブタブタ

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのブタブタのレビュー・感想・評価

4.5

パラリンピック観戦の児童強制動員を巡って車椅子の少年が「俺達障害者は健常者の〝教材〟じゃないぞ」との発言が話題になった。
バカ政府がお題目の様に唱える「共生・共存」
「パラアスリートの姿を見て共生する社会を子供達に学んで欲しい」って障害者は頑張ってたりスポーツしたりしないと「社会の一員」として認められないのか?
障害があろうか無かろうが、別にお前らに「共生・共存」を認めて貰わなくても人はそこに生きてるんだから余計なお世話だし全く「知るか」って話しだと思う。
なので『ピーナッツバターファルコン』は素晴らしい映画だった。

見に行こうとしてたけど公開が終わってしまいやっと見れた。
ロードムービーで「約束の土地」を目指す。
アメリカン・ニューシネマの雰囲気を感じるけどアメリカン・ニューシネマの登場人物は大抵、死や悲劇的結末に向かっているのとは逆に、タイラー&ザックの向かう先には常に希望や光に満ちている。
この二人の凸凹コンビって実に漫画的キャラクター。
『真夜中のカーボーイ』のジョン・ボイトとダスティン・ホフマンみたいにも見えたけど、しかし二人の旅の果てには決して悲劇はないだろうと言うのがもう見てて分かる感じがいい。
アメリカン・ニューシネマ的でありながら基本として一切の負のエネルギーがない世界というか。

おそらくこの映画は「ファンタジー」のカテゴリーに入る作品。
ダウン症の青年ザックのキャラクターが「障害に負けない」や「無垢なる存在」みたいなステレオタイプの描き方がされてない(と自分は思った)
不謹慎かも知れないけどザックという存在はゴブリンやドワーフみたいな異世界ファンタジー世界の住人が人間世界にやって来て冒険を繰り広げてるみたいな、この手の作品にありがちな悲劇性や障害者に対する「試練」みたいな演出上のアイテムとしての差別的で悪意に満ちた人間が登場しない。
ザックとタイラーの旅のスタートの所で「僕はダウン症だ」「知らん。どうでもいい」でハイもうこの話題は終わり終わり、みたいな。
タイラーとザックの旅も非常にRPG的と言うか広いアメリカの土地を旅してる様で実はゲームの中のヴァーチャル空間を旅してる様な、そして必ず役割を持ったゲーム的キャラクターしか登場しない。
(最初の方の「川に飛び込め!」しか言わないガキとか村人Aみたいに実にMPC的)
タイラーを追う2人組もこれまた漫画に出てくるみたいな悪役だし、ザックを追うエレノアもディズニーアニメのヒロインみたいに綺麗過ぎる。
突然現れる盲目の黒人ジャスパーは二人に次のステージに進む「アイテム」と「進むべき道」を与えるキャラクターで他の方も言ってますが典型的なマジカルニグロだし。

『ハックルベリーフィンの冒険』の現代版と言ってる通りに奴隷制の残る時代から現代になっても相変わらず人種差別やヘイトが無くならないアメリカを舞台にしながら、それ等を声高に非難するのでなくあくまでも背景としている所は本作がハックルベリー~と同じく少年の冒険譚であり寓話だと言う事なのでは。

ザックの旅の目的地であるプロレスラー〝ソルトウォーターレッドネック〟のレスラー養成学校へ。
そこで待ち受ける残酷な現実…と思わせてザックの元に訪れる、あまりにファンタスティックな出来事。
そしてラスト『真夜中のカーボーイ』でも目的地だったフロリダへ。
最高のファンタジー。
いい映画だった。

シャイア・ラブーフが泥酔して人殴ったり差別的発言により公開が危ぶまれたという本作。
ザック役のザック・ゴッサーゲンの言葉によりアル中の治療に真剣に取り組み更生を誓ったという。
シャイア・ラブーフってスピルバーグ作品で立て続けに主演してやっぱり勘違いしちゃったのかエドワード・ファーロングみたいな事態になっててもおかしくなかったのがその後演技派としていい役者に育ったのでこれからも頑張って欲しい(←偉そう)
それからデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』でGQエドワーズ中尉を演じる筈がフラッグ大佐役のトム・ハーディの降板、ウィル・スミスが脚本に口出しその他のゴタゴタで結局降板したというのは残念。
映画で演じてたのはクリント・イーストウッドの息子さんだそうで、劇中エドワーズ中尉はジョーカーと裏で通じてたり、非常に重要な役割だったのがジョーカーの出番削減に伴って出番も減ってしまったのだと思う。
『ジャスティス・リーグ:スナイダーカット』ではジャレッド・レトのジョーカーを出して「ナイトメア編」を新作で撮った様に、その存在が噂されている『スーサイド・スクワッド:エアーカット』を今からでも遅くないのでシャイア・ラブーフのGQエドワーズ中尉、そしてジャレッド・レトのジョーカーによる追加撮影をして完全新作場面を加えたエアー監督による『スーサイド・スクワッド』を見せて欲しい。
フラッグ大佐のジョエル・キナマンはウィル・スミスと比べて華がないとスーサイド~のレビューで書いたけどジェームズ・ガン監督『スーサイド・スクワッド』では全然そんな事はなく素晴らしい「ヒーロー」ぶりだった。
なのでウィル・スミスの出番を全カットした完全版『スーサイド・スクワッド:エアーカット』が見たいです。
タイラーの最愛の兄貴役はパニッシャーのジョン・バーンサル。
シャイア・ラブーフも近いうちにDC・MARVEL入りして欲しい。
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