EDDIE

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのEDDIEのレビュー・感想・評価

5.0
“友達”とは自分で選択できる家族。孤独に苛まれる青年とプロレスラーの夢を抱くダウン症の少年がひょんなことから出逢い夢を叶えるための旅をする。シャイア・ラブーフの渋みの増した演技にやられた。満足度は今年一番高い。

いやぁやられましたよ。これは今年一どころか人生ベストにも入りうる傑作でした。
ちょっと言葉では説明しづらいですが、好きな作品に出会うときって、その作品の出来や完成度だけでは言い表せない何かってありませんか?
正直本作は人物の掘り下げ方やクライマックスの駆け足感など、足りない部分はあるんです。多分アラを探そうと思えば色々と出てくると思うんです。
だけど、それ以上に観賞後の満足度と余韻が凄くいいんです。

この作品ってダウン症の少年ザックの夢を叶えるってのが主題にあると思うんですね。だけど、大事なのは夢を叶えることではなくて、それまでの過程であって、それまでどんな人と出会い、いかに人と関わり、何を得て何を与えたかってことなんですよね。
本作は“家族”という裏テーマがあると考えています。ザック(ザック・ゴッツァーゲン)は家族から捨てられ施設で生活を余儀なくされています。タイラー(シャイア・ラブーフ)は兄マーク(ジョン・バーンサル)に先立たれ孤独に苛まれています。施設でザックの世話をするエレノア(ダコタ・ジョンソン)は夫と死別して未亡人です。
それぞれの主要キャラにはこのように大切な家族を失っているという共通点があります。

この作品に思い入れができたのもかなり感情移入しやすい構造になっているからです。ザックとタイラーは元々の知り合いでもなく、突然ひょんなことで出会ってしまうのですが、純真なザックはタイラーと行動を共にしようとしますが、一匹狼のタイラーは1人で行動したがります。
ただちょっとした困った事態にも陥りタイラーはザックと行動することになるんですが、それからロードムービーさながらの旅をして、2人の距離が徐々に縮まっていくその過程がとても丁寧なんですね。
しかも最初は誰も相容れないようなオーラを身に纏ったテイラーでしたが、ザックと交流を深めることで徐々に笑顔を見せるようになっていきます。この感情の変化をシャイア・ラブーフが上手く演じていました。
個人的に『トランスフォーマー』シリーズでの彼はそんなに好きではなかったんですが、本作はベストアクトとも思わせられるほどの名演でした。ヒゲ面の大人なシャイアくんもいいですね。

少しずつ友達として絆を深めていく2人に感情移入させられ、2人で身体を鍛える特訓やウイスキーを飲み交わす模様を見続け、なぜだか涙が浮かんでおりました。まだそんなに泣くとこじゃない!と心の中でセルフツッコミしていました(笑)

そして、本作で特に名シーンの一つとも言えそうなザックがテイラーを慰める場面。ここでは涙が堪えられませんでした。

プロレスの試合のシーンでは正直ツッコミどころがありました。いやいやそんな飛ばんやろーとか。だけど、ザックが入場して無反応な観客にハイファイブしながら声援をもらうようにしているところとか、彼の本来持つ純真さとヒーローとしての素質を垣間見せられてまた涙。
とにかく何気ないようなワンシーンでもとても好きなところが多くて、この2人の物語をまだまだ観ていたいなと思わせられるほどでした。

途中ザックが自分は善人か悪人かと悩みを吐露するシーンがあります。そこでテイラーのかける言葉も素敵なんですが、本作の伝えたいメッセージってまさにここなんじゃないかなと。生まれながらの境遇や身分なんて関係ないし、どんな想いと行動を持って人と接することができるかってことなんですよね。
家族の在り方についても本作ならではの答えを示してくれて、締めくくりも凄くいい終わり方でした。とても大好きな作品に巡り合えました。これだから映画はやめられないんですよね!笑

余談ですが、終盤のプロレスのシーンで、WWEのレジェンドであるジェイク“ザ・スネーク”ロバーツやミック・フォーリーも出演していたので、プロレス好きはそういう細かい点でも喜べると思います(笑)

※2020年劇場鑑賞28本目
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