ノマドランドの監督クロエ・ジャオ作品。ノマドランドの予習として軽い気持ちで見たが、やられた 「泣ける映画」という言い方は嫌いですが、そういう類の作品。ぶっ刺さる映画でした。
ケガをしてしまったロデオをする主人公、彼はどう生きていくのか葛藤する、というあらすじ。
過去の華々しい自分と現在の自分、かつて最高だった兄貴分と現在の兄貴分、守らなければいけない妹の存在、未来が明るい購入馬など映画内に登場する人物や馬の関係性が見事。
映像がとても美麗。ピンクがかった空が美しい。マジックアワーのシーンがとても多く、その都度映像に引き込まれる。焚火のシーンなど空以外も美しい。映像だけでも既に最高。
演出が良い。過剰な演出はしていない。下手な映画は、過剰な音楽で泣かそうとしている。しかし、この映画は音楽が目立っていないにも関わらず、胸をうってしまう。運転しながら泣き始める主人公を1カットで映す演出が見事。また、馬を調教するシーンを同じ視点からずっと映し続ける。カットをそれほど割らずに、しっかり調教していて映画の嘘を感じなかった。
演技が良い。人間も馬も演技が良い。運転しながら泣き始める主人公や、妹の少しドライさがありながらも愛嬌がある喋り方など演技も光っていた。馬も凄い。暴れたり落ち着いたりと馬が演技をしている。うまくいったショットだけを使用しているだけなんだろうけれども、全く違和感を感じさせない。
※そう思っていましたが、実は本人らが実際に役をやっていたみたいです。これは、演技じゃないそのままなんだと。自然な演技が巧いのではなく、本当に本人同士のやり取り、説得力があったのはそのせいなのか。
ダウン症の妹や言葉が喋れない兄貴分に対して、差別的な表現がないところも良い。差別的な言動をする登場人物が登場しそうな作品だけれども、一切登場しなかった。愛に満ち溢れてました。
ラストの主人公の選択には、ハラハラしました。カウボーイをやめることはつまり、、、という匂わせは、映画のクライマックスとしてちょうどいい具合の盛り上がりでした。
淡々とした展開ですが、これは見るべき作品。素晴らしい。