MURANO

ザ・ライダーのMURANOのレビュー・感想・評価

ザ・ライダー(2017年製作の映画)
4.5
これは評判良いわけだ! 『ノマドランド』の方を先に観たが、前作がすでにそれを凌駕する傑作だったとは。クロエ・ジャオ監督、恐れ入りました!

『ノマドランド』では実際にノマド生活を送る人々が実名で多く登場し、半ドキュメンタリー的な見せ方をしていたが、その方法はこの映画で先に確立していたものだったんですね。

リアルとフィクションを融合させた手法が、この映画でも、ケガで馬に乗れなくなってしまったカウボーイの生き様を見事に浮かび上がらせていました。

もう、冒頭から、傑作の香りが漂いまくってる映画で。

ロデオで落馬して頭蓋骨を骨折した主人公。フランケンシュタインのように頭部が縫われ、痛々しいモヒカン頭で登場してきます。

この時点で、心に何かを抱えてる雰囲気が滲み出てて、その風貌もあって、『タクシードライバー』のデ・ニーロかよ、とすら感じてしまいました。

後遺症に悩まされるような致命的な怪我を負っているのだが、カウボーイとして生きてきて、やはり馬に乗ることが忘れられない。

その葛藤を深めるのが、兄貴分として慕ってきたブルライダーが全身麻痺を負っている事実で、その彼も実名出演なんですよね。

もうこのあたり、もう本当に痛切で痛切で、、、。

そして、この断ち切れない思いを、マジックアワーを活かした撮影による荒野の情景が、美しく切なく、絵で語ってくる。

馬は大怪我をして使いものにならなくなったら安楽死させられるが、人間は大怪我して生き甲斐を失っても生き続けなければならない。

そんな生きる意味を考えさせるテーマを、淡く美しい空と荒野を背に、馬に乗って駆ける男の姿が、訴えかけるてくるんです!

自宅のテレビ画面で見てても響きまくりだったのに、こんなの劇場の大画面だったら、さらにゾクゾクしただろうに。

『ノマドランド』が話題になることでこの映画の存在を知り、観ることが出来て本当に良かった!
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