COZY922

ソウル・キッチンのCOZY922のレビュー・感想・評価

ソウル・キッチン(2009年製作の映画)
3.0
【ソウルキッチンに集うのは怪しげで奇天烈な人ばかり 】
ドイツ北部ハンブルグ。ヨーロッパの街は市内の中心を運河や川が流れていることが多いがハンブルグもその例に漏れない。運河にかかる橋や川沿いに建ち並ぶ街並みはレンガ作りの建物や尖塔、石畳の舗道など他の都市同様に美しい。けれど、同時に港湾都市として発展したこの街の歴史からヨーロッパ屈指の歓楽街を有し、そのせいかどことなくカオスな空気が漂う。そんな街が舞台の映画だけあって、一風変わった人が盛りだくさんだった。

古い倉庫を改造して作ったソウルキッチンというレストランを営むギリシャ系移民の主人公は見た目がチョイむさ苦しいけど 割とまとも(笑)。ただ 椎間板ヘルニアを患ってしまい歩くのもままならない。彼以外の登場人物はと言えば、コソ泥などに手を染め仮出所中のダメ兄貴、料理の腕は確かだけどキレると包丁を持ち出すヤバいシェフ、しっかりしてるのか いい加減なのかよくわからないウェイトレスに、家賃未払い&ソウルキッチンの料理をただ食いする隣りに住むお爺ちゃん、胡散臭さ満点でずる賢い割には間の抜けた悪徳不動産屋の同級生。そして夜な夜なソウルキッチンに集まる やさぐれた人々。まるでキャラクターのエキシビションのよう。

個性的なキャラクターに負けじと音楽も多彩。序盤のヨーロッパ的な曲に中盤のクラブでの音楽、生演奏と称して演奏の練習をしまくるバンド連中。

ノリのいい音楽
美味しそうな料理とお酒
悪友や仲間たちとの会話
the 大衆食堂なカジュアルな空気
素材はいいしテンポも軽快。
エンドロールもお洒落。
パーツはどれも素敵。

ただ、1つ1つの個性が際立ち、いろんなことが起きる割には それらの繋がりがevent driven 的で心理的な描写が相対的に希薄なため、退屈せずに最後まで行ける観やすさに反して 後に残るものは少ない。ジャンルとしてはコメディに分類される作品ゆえに、キャラクターの掘り下げを犠牲にしてテンポの良さを優先したのかも。あるいは 暗くシリアスな作品の多い、移民が登場する映画のセオリーをちょっと崩す意図があったのかもしれない。

多種多様なバックグラウンドの人々が共存する街。彼らが集うボーダーレスな空間、ソウルキッチン。できれば そのタイトルに違わぬ、料理にフォーカスした内容であってほしかった。
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