朝田

アンカット・ダイヤモンドの朝田のレビュー・感想・評価

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)
5.0
前作「グッド・タイム」も好きだったが、サフディ兄弟は軽々と越えてきた。超絶大傑作。宝石に狂った商人が破滅していくという、極めてシンプルなプロットでありながらサイケデリックな色彩の映像と、ドキュメンタリータッチのカメラワークによって全編に渡り息つく暇も与えない緊張感を漲らせる。OPNのスコアがとにかく作品内の登場人物といって良いほど、物語を牽引し続ける。街の雑踏や、人々の怒号と溶けこんでいくようなノイジーで重低音の効いた音像が凄まじい。だからこそただ人々が部屋や車の中で喧嘩をするだけのシーンがとてつもないスリリングな場面に見えてくる。前作「グッド・タイム」にもあった表情への注視や、背中を追っていくカメラワークが、一切共感できないはずの人物造形の主人公の内面に思わず没入させていく。OPNのスコア以外にもドレイクとミーク・ミルのAmenや、ケンドリック・ラマーのSwimming Poolsとラップの使い方も絶妙。ザ・ウィークエンドも完全にサフディ兄弟の世界観に溶けこんでいる。オープニングの「ファイト・クラブ」的なアニメーションも痺れるほどカッコ良い。しっかりとそれがただの表面上のスタイリッシュさを追及した演出に終わらない、エンディングと繋がっていく円環構造になっているのも巧い。主人公を演じるアダム・サンドラーはコメディエンヌのイメージがあったが、シリアスな表情をのぞかせていて新境地を切り開いている。映像もプロットも、アッパーなテンションと、ダウナーなテンションが入り混ざる極めてドラッギーな映画であり、現代だからこそ生まれた、あらゆるカルチャーが融合した最先端のアメリカ映画。
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