ATSUSHI

Last Girl Standing(原題)のATSUSHIのレビュー・感想・評価

Last Girl Standing(原題)(2015年製作の映画)
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その女、死を寄せにけり


whatculture.comのピックアップより「活躍が見落とされがちなファイナルガール特集」なる動画から知った一本。(ピックアップのなかに『ヘルレイザー』のカースティー、『死霊のはらわた』(2012)のミアが選出!気になる方が是非検索を!)
タイトルの通りメタフィクションの視点を持つ、スラッシャー映画の概念を覆す心理サスペンス作品。国内リリースが期待できないので某動画サイトより鑑賞。

【STORY】
友人たちのキャンプ中に動物マスクの殺人鬼に襲われ、辛くもたった1人生き延びたキャムリン。
血塗れのまま寂れた道路を徘徊するところ通りかがりのドライバーに拾われるが、乗せてもらう助手席にすら殺人鬼の幻影を見てしまうほど心身を病んでしまった。

時は経ちクリーニング屋の仕事で細々と生活するも、毎晩のように殺人鬼の悪夢に苦しめられ、最悪幻影すら未だに治らない。
残業の夜に再び事件は起きた。ロックされたはずの裏口から再び殺人鬼は彼女の前に現れたのだ。キャムリンは隅々を見て追うのも見逃してしまい、警察沙汰まで引き起こしてしまう。
そんな孤独なキャムリンのもとに新入社員のニックと出会い、積極的な彼はシェアハウスを共有する仲間にも迎えられる。挙動不審なままのキャムリンは大半から厭われるも、それでも心を開いてくれる女性ダニエルがいた。













【STORY・ネタバレ含】
*記憶を頼りに書いているので正確さはあやふやです。すみません*


全員でクラブ飲みするなか、またして殺人鬼を目撃したキャムリンは誤って他の客に暴行を働いてしまう。遂にはルームメイトの大半から愛想尽かされるものの、ダニエルとニックは彼女を見捨てずにいた。車でキャムリンを家まで送るもダニエルは急遽一晩泊めてもらうよう申し出る。
常に真摯なダニエルにも暗雲の過去があり、家族内で抱えていた問題から始まった。両親との軋轢の末、交通事故まで巻き起こし、通り掛かった幼い少女まで犠牲になった事も明かした。

お互いトラウマを抱える仲として遂に打ち解けたキャムリンとダニエル。
次の朝、キャムリンはダニエルにある頼みを申し入れる。遠い田舎を経てドライブで着いた先は例のキャンプ場。着いて即座にキャムリンが手にしたのは2つのショベル。つまりは現地で埋められた殺人鬼の亡骸を燃やす事が目的だった。日が暮れる頃に墓穴が底をついた。遂には死体を発見し、トラウマ打開を目的にキャムリンは火を灯した。

新たに人生を迎えようとする頃にルームメイトの開く展示会が催されようとする。ダニエルもニックも含み全員が集まろうとするため、キャムリンも勇気を振り絞りドレスと口紅を用意する。久しく対面する全員に詫びた後、パーティは楽しく過ごせるはずだった。


【終盤】
人目を退け、ニックはキャムリンを連れ出しより距離を狭めようとした。2人は遂にキスを交わし、ソファへ横たわる。熱い時間を迎えようとするキャムリンの目前にはまたしてマスク姿の男だった。悲鳴をあげるキャムリンはその場で見つけた斧を振り上げる。
血塗れたキャムリンを見かけたルームメイトの一員が怯えた様子で立ちすくむ。キャムリンがのし掛かっているのはマスク男の死体ですらない、息絶えたニックだった。息を切らすキャムリンは出くわす者皆マスク男にしか映らず、パーティ会場は血の海と化した。逃げ惑うダニエルはキャムリンに抵抗するも、足を崩してしまう。
斧を振り回すキャムリンが『何度でもお前を殺してやる』と言い放つ末に警察からの射撃で倒れた。
ショックに震えるダニエルは警察より救助される。ダニエルがパトカーに連れ込まれるその時、死んだはずのキャムリンの姿を目にしてしまい、新たな惨劇のサイクルが繰り返されようとする。




つまるところ、この映画がやってる事は『ハ◯テ◯◯◯ン』なのですね。近年スラッシャー映画の定石を乗っ取るホラーでも『OPEN 24HOURS』も面白かったが、こんな手もあったかと。いや、あまり人がやらない事をやり切ったという印象。
ホラーとしては使われる血糊も冒頭と終盤の適量ほどで多くはなく、物語の方向性として恐怖演出よりも心理的緊張感を煽る作りになっているのが分かる。PTSDが付き物になる題材としてはこういう解釈は新しい方ではある。どの段階からが引き金だったがいまいち明確ではないが、敢えてそうしたのかもしれない。

それにしても皮肉が過ぎる話だ。
『ファイナル・デスティネーション』シリーズ如く、生き延びた方が悪いとばかりに追い詰めいっては、ラストでは惨劇の連鎖を思わせる後味の悪さは忘れ難い。




〈レビュアーの皆様にお聞きしてみたいこと〉
僕個人のファイナルガールの推しは『フロンティア』のヤスミン。こちらも『悪魔のいけにえ』系統作品。彼氏を含む仲間を全員惨殺される憎悪と妊娠する女性としての覚悟のもと、たった1人でネオナチ一家へ反撃。ラストにはショックで身体を震わせながらも全身血塗れで勝利を決める強者。

さあ、貴方のお気に入りのファイナルガールをコメントでどうぞ(^^)