オールド

国家が破産する日のオールドのレビュー・感想・評価

国家が破産する日(2018年製作の映画)
4.0
【韓国通貨危機の概況】
朝鮮戦争後、韓国は民間の外貨建て債券(以後、外債)に頼った輸出志向経済で成長した。「漢江の奇跡」だ。
しかし97年の前には、①他の成長国との輸出品価格競争、②アメリカの強いドル政策(ドル高政策)でドルペッグのウォンがドル以外の通貨に対して割高になったこと、これらの影響で輸出利潤が下がっていた。利潤を下げて外債への債務不履行(デフォルト)を起こした財閥系企業の倒産が始まった。
そのころのタイと同じような流れで海外投資家は韓国から投資を引き上げ、ウォン売りが連続した。韓国の政府と中央銀行はドル建て外貨準備を使ってウォンとドルの交換比率を一定に保とうとするが、結局は国を挙げての外債デフォルトを起こした。
最終的にIMFの介入を招いた。

【感想】
食器工場経営者、脱サラ投機家、韓国銀行実務家、財務局。この4つの目線をとおして、通貨危機が韓国の実体経済、金融経済、政官財界に与えた影響を描く。目線によっては「影響」なんて落ち着いた言葉を使ってくれるな、という事態になってしまうんだが。
人類って一体何回レバレッジ(借金で手元の資金を膨らまして投資・投機すること)の過剰による危機を味わえば気が済むのか!ってもういやになってくる。「投資」と「投機」で日本語は酷似してるけど、英語ではinvestmentとspeculationで別概念なんだから。
劇としては演者がみんないい。4つの目線ごとに"内心薄々わかっているんだけど起きて欲しくないこと"があり、結局それがそれぞれ起きてしまう、その時の顔。不謹慎ながら劇と割り切らせてもらえるなら、見ものです。

コロナ前あたりから三橋貴明、中野剛志、柴山桂太、森永康平あたりで政治経済の勉強を続けてきた甲斐があったー❗ 韓国固有の事情以外は特に引っ掛かる部分が無く観賞できた。特に三橋貴明様々だ。本作を通し、彼の説明の簡潔さ、定義の明確さ、論理の明快さを改めて痛感した。ありがとうと言いたい。

●外貨準備と固定相場制、外貨建て国債と海外保有円建て国債とは
https://youtu.be/Wd0t8Ec6_A0?si=Fsc70gIQox2EXnVI
https://youtu.be/MfOovT0GKxQ?si=FsLLNSDHdPIL13eW
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