ほおづき

Fukushima 50のほおづきのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
5.0
正直観ることをすごく躊躇した。
日本を守るために、放射能を浴びて命を削りながら作業をする人たちのドラマなんて仮に創作とはいえ観ていられる自信がなかったから。
実際、開始5分くらいでこみ上げてくるものがあった・・・
そして、どのシーンも実際の現場が頭に浮かんで、恐怖で何回か観るのを中断した。
  
例えば自分の所属するプロジェクトが大炎上して、この映画みたいにリーダー陣が「でも、やるしかないんだよ・・・」しか言えないような状況になってたとしても、こんな命の危険があることは絶対にない・・・
さらに、いくら上司の命令だからとはいえ、ここで食い止めなければどちらにしても死ぬっていう状況で、自分が炉内に入りますって手を挙げる度胸は絶対にない。
そしてそれを部下に命令する気概も絶対にない・・・
今シーン思い出しても泣けてくる。
 

あれからもう10年も経ってるのに今でも鮮明に覚えてる。当時10階にいて、テーマパークのアトラクション並みに左右に振り子状に揺れる部屋のテーブルの下に隠れながら死を意識した。たかだかそんなことで怯えていたのに、原発の間近にいて戦場を戦った人の気持ちに入り込むにはまだまだ器が足りない。これを観るにはまだ早すぎたのかもしれない。

すごく感傷的に描かれていて、どこまで事実かわからなくなるけど、どちらにしてもこの映像の何百倍も実際に起きていたことの方が過酷で悲惨なのは間違いないことで、映画のレビューを書くことですら安全な場所から命令するだけの人たちと何も変わらない行為に思えてくる・・・

実際に誰が何をしたかの詳細とかそんなものwiki調べれば出てくる。関連の記事読むだけでも悲惨さはわかる。
それでも、エンターテイメント性の高い映画にしたことで、リアルなドキュメンタリーよりは観やすくなっているので、一度は観ておいたほうがいいかもしれない映画だったとは思った。
とにかく・・
観終わってすごく疲れた。

東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。


▼ちょっと愚痴
ぜんぜん関係ないけど、やたら無駄に総理無能描写があった気がする。
映画作品として仮想敵を描くことは必要だったかもしれないけど、ちょっとしつこかったし演出が幼稚だった気がする。擁護したいわけじゃないけど、あんなにも必要だったかは疑問。
それらの演出のせいで、思想が入り込みすぎてなんだか作品の品位が落ちてる気がした。
同じ品位を落とすなら、全国各地から現地に送られる処分に困る千羽鶴や生の食品、誰も着ないようなぼろぼろの古着なんかが迷惑がられているっていう描写いれたほうが何倍も有益だと思う。