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Fukushima 50のSoのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
3.9
あの日、あの数日の間に、どれほどの事が起き、どれほどの人が事態の凄まじさに直面したのか。

起因は自然災害であっても、原因は人災である原発事故。人間の力はかくも非力なのだ。

映画は限りなく事実を基にしつつもドラマ仕立てに描いているが、そこにフィクション性は微塵も感じられなかった。現場の苦悩、家族への想い、死への恐怖、責任への葛藤、様々なものが人間関係に影を落とす。事の甚大さを振り返るまでもなく、映画内で描かれたそれぞれの登場人物の心理描写もまた、すべて確かにそこにあったことだろうと確信する。

地震から津波の状況描写、原子炉建屋内や溶解炉のリアリティーが予想を遥かに超えてよくできていた。
物語の軸になる役どころは佐藤浩市演じる伊崎という最前線で対処に当たった現場長。彼の娘(吉岡里帆)との、些細だが日常にあり得そうな父娘の不和のエピソードが伊崎の人物像と共に、この厳しい現実に直面したすべての人々の背景をも想像させ、それぞれの人生を重層的にふくよかに肉付けする。
周りを固めるキャストが誰をとっても素晴らしい。そして何より渡辺謙が演じる吉田所長。
彼があの日あの時あの現場にいたことが、私たちにとってどれほどの幸運だったのか。

風化はありえない。
日本で核エネルギーの恩恵を享受する者すべてが、記憶していなければならない。
そのための一つの素材、この映画は今後何十年と大きな役割を果たせるだろう。
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