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ホテル・ムンバイのottamaのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.1
実話に基づいた映画なので評価をつけるのもどうかと思うけれど、事件の切り取り方が絶妙で、没入感がすごい…!

ホラーなんかよりよっぽど恐ろしい現実の恐怖を疑似体験した2時間だった。

徹底的なリサーチと取材を行なった、とHPに書いてあったが、それがビシバシ伝わってくる。背景や人物像が丁寧に描かれているので、登場人物にリアリティをもたせてくれる。一方で、加害者も被害者に対しても一定の距離を持って描かれているので、観ている方も特定の誰かに肩入れすることがない。
どちら側の状況も冷静に把握した上で起きている事象だけを観ることになるので、より一層このテロの哀しさが強調されている気がするのだ。

ストーリー後半、大勢が避難している一室から6人が外に逃げ出すシーンがあるが、幸運を祈ると伝えたシェフに対し、ホテルのVIP客、ロシア人のワシリーがつぶやく一言が脳裏に焼きついた。「祈らなくていい。それがすべての元凶だ」。いけすかない奴に思っていたけど、こういった悲しいテロ行為の本質を捉えていて、結構ゾッとしてしまった。

この映画の撮り方にも表れている気がするけれど、何かに肩入れすること、信じすぎてしまうことって、冷静さを失わせてとても危険なことかもしれない、と思わせてくれる映画だった。
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