あかり

ホテル・ムンバイのあかりのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.7
観終わった後の疲労感となんとも言えない感情。映像とストーリーにただただ圧倒されました。

胸にくるものがありすぎてボロボロ泣いてしまったわけですが、一番泣いたのはテロリストである少年が受話器を手に取るシーンです。表から見たとき『テロリスト』と『被害者』という関係しか見えないけど、中から見たとき、テロリストの彼もまた貧乏で家族思い故に洗脳されてしまった『被害者』であるということが痛々しく描かれていて、彼と一緒に泣き叫びたくなるほどでした。

銃規制がされている日本では銃乱射は起きる可能性の低い出来事ですが、五つ星ホテルですらあれです。今のご時世誰にでも降りかかる可能性のある出来事なのです。それが怖かった。その上で、人が多く集まった中であれほど冷静にお客様を守ろうと盾になった従業員がたくさんいたこと、それが素晴らしいことだと一言で言えることなのかは分かりませんが、自分が誇りを持って働いている場所を家だと言えること、お客様は神様だと言えることは誰にでもできることではないです。

この映画の中で圧倒的悪だった唯一の人物は、まだ幼さも残る少年たちを導く声だけで顔も分からず、今現在も捕まっていないというのが恐ろしい。テロリストだけを絶対悪と言い切れない構成になっているのが本当に苦しくて、久しぶりにこんなに疲れる映画を観ました。楽しい映画もあれば現実を突きつけてくる苦しい映画もあります。そこが映画の好きなところです。
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