みいしゃ

ばるぼらのみいしゃのレビュー・感想・評価

ばるぼら(2019年製作の映画)
5.0
東京国際映画祭で鑑賞しました。

まず、二階堂ふみ、稲垣吾郎という第一線の俳優がこの役のオファーを受けたこと、そして体当たりで演じきった役者魂に脱帽!

それと共に、クリストファー・ドイルが撮る映像が美しく、作品中の橋本一子の音楽が実に効果的。

この4人のキーパーソンをキャスティングできたことが、映像化が困難とされてきた本作、本質的には退廃的でエロティック、一歩間違えば三流作品になってしまう危うさを抱えた題材を、何かしら幻想的で儚くも美しい映像作品に昇華させることができた勝因だと思う。


都会が消化して垂れ流した排泄物のような女=ばるぼらと言いつつ、美倉がばるぼらに惹かれるきっかけが哲学的な言葉のキャッチボールだったことにしても、本能的に美倉を理解し、異常性癖に起因する危機から守るミューズ的な立ち位置であったり、美倉と交わう時の一糸纏わぬばるぼらの美しさ!

都会の路地裏では薄汚れた浮浪者でしかない女が、運命の相手に出会って美しく輝くよう。

美倉も、許嫁(?)の父に従い、富と名声を得る道を選ばず、ばるぼらと共に生きる選択をする。
一般社会的には「道を外れ堕ちていく」と表される行動だが、社会的地位や惰性、上辺だけの世間体の方が薄汚れた世界と直感的に拒否感を抱き、本能的に惹かれるばるぼらとの逃避行が美しい映像美で描かれるあたり、社会と個の関係性を映しているようだ。稲垣吾郎が醸し出す気品が余計それを際立たせる。

いずれの道も儚く、切ないやるせなさが付きまとうが、ともかく、女性の観客である自分がこれだけ雄弁に語りたくなる衝撃的な作品であることは確かだ。

映画が公開されるまでに手塚治虫の原作を読んでみたいと思った。
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