すし酢高跳び

グロリアス 世界を動かした女たちのすし酢高跳びのレビュー・感想・評価

3.1
3月8日、国際女性デーです。

毎年この日は、女性にちなんだ作品をレビューしてきました。もう前のアカウント消えてしまったので、レビューは見られないけれど。

1年目は『パットマン』愛する妻の為に始めた生理用ナプキンを作った男の実話。インド映画。
2年目は『ドリーム』60年代のNASAで活躍した黒人女性の、これまた実話。ケビンコスナーの上司役がカッコいい。

さて、今年はこちら。

ガチガチの女性活動家、グロリア・スタイネムの伝記ドラマ。演じるのは、ジュリア・ムーア。

声帯があるからみんな歌手ではないのと同じく、子宮があるから子を持つとは限らない。

この言葉に表れているように、中絶問題にかなり重点が置かれていたと思う。もちろんそれ以外の様々な活動をしてきた彼女。1960年から70年は女性の権利を主張するには激動の時代。

大学の時に奨学金を貰い、2年インドで過ごす。しかしその時、結婚を考えていた彼女のお腹には子供がいた。自分の夢を優先して堕胎を決意。これがこの後の活動にも繋がったのだろう。

彼女はアメリカ、ニューヨークで記者として入社する。しかし、今から半世紀も昔、それはそれはハラスメントの嵐。この辺りは、昨今のフェミニスト系作品を観てきたら、よく見た風景。安定のおっさんへの苛立ちを覚えますが、この作品が言いたい所はそこではないのです。

彼女は、ラジカルなフェミニストです。
時に意見に耳を傾けてもらう為に、過激な事をする事はあります。
1人だと違法行為も1000人なら革命になる。とっても過激に感じる思想。

柔らかい考えや広い視野も持っていながら、過激に傾く仲間とも活動し、世界中を旅して演説する日々。

この作品では、それを行け行けドンドンとヒーローのようには描いていません。過去、時として幼い頃のグロリアが登場し、現在のグロリアに質問するシーンが度々あります。
『後悔してない?』『それでこれは成功したの?本当に?』
都度答えてはいるものの、それが正解だったのかは、本人もわからなかったり、時には失敗だったと今だから答えられる事もありました。

また、グロリア自身の家族の事も描かれていて、特に母親は、自分と同じ記者をしていたのが興味深いエピソード。母親が精神を病んでいるのですが、彼女はきっと適応障害だったのだろうな。日本の皇族、雅子様と同じか。キャリアウーマンが家庭に収まらざるを得ないと、よく起きるのかもしれない。

グロリアは、そこまでカリスマ性がある訳でもないし、巧みな演説家でもない。苦手な部分は色々な他の女性活動家と協力して活動しているし、決して強い女でもない。迷いながら時には差別を憎んでいながら、自分も同じく差別している瞬間も描いていた。

ちなみに、彼女は独身を貫いたかと思っていたが、66歳にして結婚している。しかも、俳優のクリスチャンベールの父親と。地味なこの作品中で、1番驚いた部分である。

観ていて気持ちが良いとか、泣けるとかではないが、逆にこの作品をキッカケに、自分なりに性差別や女性、男性の権利について考えられると思った。

今でもアメリカで、女性大統領は誕生していない。
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