くさむすび

クローブヒッチ・キラーのくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

クローブヒッチ・キラー(2018年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

まず脚本の力が強いなと思った。割と序盤の方でタイラーが「もしかして親父、特殊性癖持ちのシリアルキラー?」と疑問を持ち出したくらいの所でタイラーと父が小屋で話すシーンがあって、そこで説教兼ねて父が神と性欲について語り出すんですよね。グダグダ喋って「よく分からない」みたいな事を息子は言うんですけど、父がトンカチを持ち出して「お前をここで殴ったらサルと同じだろ?」的な事を息子に問いかける。その時の反応が素晴らしい。息子はその問いかけに対してだけ強く同調していた。思春期特有のささやかな反抗、そして父への疑念をこのやり取りだけで見せる。まずこのポイントが見事だった。

そして息子の成長ストーリーであった。家庭教師に行くと言いつつ、連続殺人を追う少女と一緒に行動するタイラー。しかしその行動は父親の尾行によって綺麗に見透かされる。バレていないようにしていたつもりが、父にバレていた前半。
そして打って変わるように、後半では父をバレないように息子が追うストーリーに変わっている上手さ。ストーキングやラストの親子対決を通じて息子の自立ストーリーに仕立て上げる、「身内が殺人鬼でした」ジャンルならではの着眼点と落とし所。「結局父には勝てない」を映し出しながら、ラストで父親の顔面に銃を向けるシーンと「父さん、ありがとう」というスピーチがクロスオーバーするシーンも良かった。僕的な解釈で言うと、銃を撃ったんじゃないかなと。撃ったことで、真の一人の大人として自立の過程を歩めたんじゃないかと。

シリアルキラー映画なのに、殺人シーン以上の衝撃的なシーンがこの映画には待っていた。父親が自ら女装して緊縛プレイの写真を撮ろうとし、そして良い写真が撮れずにベッドの上でバタバタする。側から見たらめちゃくちゃ笑えるシーンなんだけど、同時に狂気を感じた。今年1の名シーン。

息子の成長譚、ジュブナイル、母を殺された少女の復讐、父の尊厳など様々な要素が盛り込まれていた大傑作だと思った。

P.S 宣伝で『Summer of 84』の名前を出していたので何の関連性があるんだと思っていたけど、たしかに地下に侵入する所は「似てるな〜」と思いながら見ていた。
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