くまがい

人間失格 太宰治と3人の女たちのくまがいのレビュー・感想・評価

2.5
「芸術っぽさ」を纏ったバチェラーだったので、卓上のローズでわらってしまった。さんざん赤を散りばめ、青い絵の具→青い着物・庭の青い花で宮沢りえの太宰との訣別を表わしたあとの、遺書の「お前を誰よりも愛してゐました」を体現するかのごとき心中の川辺に咲く青い花、という流れはしかしちょっとあざとすぎる。

ところで太宰という題材はなかなかに商業的でいやらしい。「死ぬほどの恋。ヤバすぎる実話。」というコピーに寄せられた批判の多くは「文豪の作品なのに!」「こんなの文学じゃない!」といったものだった。文豪や文学といった言葉はしごく曖昧で、権威的だ。そういう(小説ではない、ブンガクという言葉の)「芸術らしさ」に酔いしれる人びとは、得てして太宰ばかりを読んでいる。つまりそれほど本を読むわけではないが、かといってまったく読まないというわけでもない層にとって、太宰は文学や文豪の象徴であり、ブンガクを消費するには恰好の材料なのだ。そういう意味でこれはすごく電通的な映画であって、案の定エンドロールには電通の名前が流れていた。
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