コクムービー

人間失格 太宰治と3人の女たちのコクムービーのレビュー・感想・評価

3.3
耽美な退廃。

明と暗が乖離し、彩度が適度に削がれた世界は圧迫感のある箱庭のようで、音が常に視覚よりも手前で鳴っているような感覚もその密閉度を助長している。

花が散るように堕ちて行く太宰治。

聖書とも対比されるべき、死を描いた「人間失格」を生み出す過程。その淀んだ死と退廃の上澄みをかき混ぜたら、美しいマーブル模様が浮かび上がってきたかのような甘美さは、あたかもそれを軽んじているかのようにさえ映る。

まさに美術、美の視覚表現を目指す芸術だった。