ヒムロ

ジョジョ・ラビットのヒムロのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.3
第二次大戦下のドイツ、10歳の臆病な少年ジョジョの友達は空想上のアドルフ・ヒトラー。
戦地から帰ってこない父の代わりに母を守ると鉤十字に誓いを立てた愛国者だったが、ある日家の隠し部屋にユダヤ人の少女を見つける。
亡くなったジョジョの姉の友達だったと嘘をつくその少女の名はエルサ。
ナチスに彼女を差し出せば、協力者として母ロージーが疑われる。
ジョジョは彼女の事を秘密にする代わりにユダヤ人の情報を教えてもらう取引を始める。


いい意味で思ってた映画じゃなくてとんでもなく喰らってしまった。
元々あらすじとかをきっちり見るタイプではないので「ヒトラーがイマジナリーフレンドの子供が主人公のコメディタッチの映画」ぐらいの認識で見たのだが、アンネ・フランク的な要素に驚き、後半の作風の変わりようには心臓を短剣で貫かれた。

序盤はナチスのために貢献したいジョジョが自身の勇気のなさをヒトラーに励まされつつ進んでいくコメディ的な話ではあったのだが…。
エルサの登場から徐々にヒトラーの出番は減っていく。
このイマジナリーフレンドという設定が非常に秀逸で、そのままヒトラーの出番量がイコールジョジョの愛国心の表現になっているのが良い。

エルサを庇っていることが分かってからのロージーも見ていて辛い。
帰ってこない父が死んでいるであろうことは想像がついていたが、その上でユダヤ人を庇いながらナチスに心酔している息子を普通の顔してたしなめるのには相当の心労があったと思う。

後半からラストはあまりのしんどさにめちゃくちゃ陰鬱としながら見ていたが、前半のコメディや色彩表現とは180度変わった映像はまさにやられたと言った感じ。
特に好きだったのはクレンツェドルフ大尉がジョジョを2度も庇ってくれる所。
ヒトラーのことは決して肯定的には描かず、かつドイツ兵にも良い人間はいるというのをきちんと描いてくれるのが良い。

最後は正直そんな明るく終わられても無理無理という気持ちだったが、映画ぐらいは希望的な終わり方がいいという判断なのだろうか。
個人的にはそこまでに喰らいすぎて全然立ち直れなかった。
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