朝田

ジョジョ・ラビットの朝田のレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.5
まったく新しい戦争映画。ナチスというシリアスにならざるを得ない題材をウェス・アンダーソンのようなポップな色彩とシンメトリーの構図によってユーモアと共に極めて軽快に語っていく。同時に、戦争自体の悲惨な描写もきちんと描き、戦争映画としてのバランス感覚をもたらしている。そして戦争映画としてのメッセージを告発するのに留まらず、最終的にはボーイ・ミーツ・ガールな、青春の物語に着地していく事で普遍的な感動を与える。この構成が実に新鮮。全編に渡りクローズ・アップや、スローモーション、主観ショットをシンプルなカット割りの中に織り込む事で、語り口のリズムとトーンを変化させ、単調さを避けている。特に、ジョジョが訓練によって顔にケガをし、病院に連れていかれるまでのシーンは、そうした技巧が詰まっている。また、スカーレットヨハンソンの足元にアップしたカットや、スカーレットヨハンソンがジョジョの靴紐を結ぶカット、ヒトラーに対する挨拶の仕方を練習するカットなどが終盤において反復される中で違う意味を持ったシーンへと変化していく演出も見事。正直全編を通して小手先の手法の遊びも多く、普通の編集でも良いように感じる部分は多々あったが、この完成度の高さは否定しようがない。子役たちのチャーミングさや、スカーレットヨハンソンの演技も非常に魅力的。アカデミーノミネートも納得な一作。
朝田

朝田