クマヒロ

ジョジョ・ラビットのクマヒロのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.2
『シェアハウス・ウィズ・ユダヤ』

人種の分断を少年視点のファンタジーとして描く。

冒頭「The Beatles」の「抱きしめたい」とともに流れる映像、ジョジョの体験する世界の美しさ、魅力的なこと。
訓練を受ける時も教科書を捨てる時もなんとも多幸感に満ちている。
子供の世界として戦時中を写すと暗かった世界がここまで明るく見えるのかと思わせ、「マイティ・ソー」シリーズにおけるタイカ・ワイティティ監督の手腕を連想させた。

ユダヤ人のエルサとの出会いが少年が教え込まれた人種の分断をどう変えていくのか。
「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」で見られた監督の優しい笑いが物語をラストまで温かくしていた。

なんと言っても強く優しく、反時代的に生きる母の姿が印象的。
彼女のおかげでジョジョの世界に彩りがあることは明白で、少年視点ならではの「靴」の演出は涙なしには見られない。
彼女の死から画面が引きの画になり、色を失うことも辛くさせる演出。

現実と向き合い、色をなくした世界に色を添える教官キャプテンKは流石のサム・ロックウェル。
やさぐれ教官から引き際まで所作が完璧。

2人が外の世界と向き合っていく決意を固め、踊る。辛い世界を優しい大人たちが優しく包み込み、ラストまで非常に優しい物語。

人種の分断や、反時代的な動きはいつも大人次第である。同じ時代を生きる、シェアハウスしている仲間として、人種を超えた繋がりを意識させてくれる作品。
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