蛇らい

ジョジョ・ラビットの蛇らいのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.8
ジョジョは愛にまつわる言葉をロージーとエルサから投げかけられる。愛は最強であると。目に見えないものが強いはずがないと疑う。

しかし、肌で温度で受け止めた感覚が言葉や五感を飛び越えてジョジョのすべてを抱きしめる。そして世界の形を知る。

戦争?人種差別?性的マイノリティ?ナチズム?ホロコースト?そなんもん愛にかかれば屁でもねえ!と確信めいた語り口、どこまでもまっすぐな眼差しで説く。

抱擁→愛、ダンス→自由といったように劇中にシンボル的な要素として散りばめられ、ほのぼのと温かい気持ちにさせられる。かと思えばナチが生活のすぐそばに迫ってくること、ユダヤ人が壁の中で生きなければならないなどの生活に渦巻く息苦しさが対比として効いている。

処刑されたロージー(母)に、しがみつくように抱きしめるジョジョの悲しい姿が、家で抱きしめあいながらダンスをしていた幸せなシーンと対比をせずにはいられない。幸せな家族とのシーンでは観客に印象を植え付けるかのように頻繁に登場するロージーの足元のカット。これがまた処刑のシーンで痛いくらいの意味を成す。

児童文学的な文脈なうえ、シンプルな教訓で寓話性の高いストーリー、ユーモア溢れる演出で表現されている。ジョジョくらいの年齢の子どもたちにみて欲しいなとおもった。ヒトラーの格好だったり、ゲシュタポの言動だったりをゲラゲラ笑いながら観ることもまた正しい姿だと思う。

ラストでジョジョとエルサはダンスを踊る。家の中や壁の中ではなく、真昼の空の下で自由に踊っているのだ。
蛇らい

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