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ジョジョ・ラビットのaのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.6
可愛らしい音楽、可愛らしい洋服、可愛らしい建物(これに関しては、私が日本人だからそう思っただけかもしれない)など、可愛らしい雰囲気に、コメディとして「馬鹿馬鹿しく」描かれた第二次世界大戦は、他の戦争映画とはかなり異なる物だった。
そして私は、そのあまりに異質な世界観を「気持ち悪く」感じた。

まず、実際のヒトラーの顔はほとんど見せず、彼を基本的に「コメディアンのようなヒトラー」としか表現しなかった事が、彼に対する最大の皮肉のように感じた。

主人公の10歳の少年は、純粋で、真っ直ぐで、可愛らしくて、あまりにナチやジェノサイド、ユダヤ人に対して無知だった。もちろん、彼は10歳のため仕方のない事である。しかし、その純粋さが、時と場合によっては凶器となり、人を傷つけるという残酷さが綺麗に描かれていると思った。

主人公のお母さんは、異常なまでに勇敢で、賢明で、愛に溢れた優しい人だった。20世紀初頭のドイツで育った「アーリア人」の彼女が、なぜあのような考え方になり、行動し続けたのか、彼女のバックグラウンドについて詳しく知りたいと思った。
だからこそ、彼女の足に主人公が抱き着くシーンは、とてもショックで言葉を失った。

キャプテン・Kは、10歳の少年に対しても正面から向き合う、ユダヤ人を守るような行動を取った事などから、偉大な人物であるという印象を受けた。しかし、彼は大尉になる程ナチに貢献していた人物にも関わらず、ユダヤ人を保護するような行動を取ったため、主人公の母親同様、彼のバックグラウンドに大変興味を持った。
そして、彼の最期のシーンは、彼の優しさが大きすぎて涙が止まらなかった。

また、素晴らしいシーンであったと言いたいのだが、私が言葉を知らないため、悪口のように聞こえてしまうかもしれないが、全く悪口ではないという事を前提に、ラストシーンの二人のダンスはあまりに不格好で、その「不格好なダンス」が、その瞬間の二人にはぴったりだと感じた。

そして、英語で作られた作品にも関わらず、英語というドイツ語ではない言語で、ヒトラーの演説を「ヒトラーの演説」として聞かせた、俳優さんや彼を指導した方の技術力に大変感動した。

私は当時のドイツについて知識を持っていないので、疑問に思った点がある。
主人公は戦争孤児になっても、そのまま彼の日常を生き続けた。なぜ彼は戦争孤児として保護されなかったのか。彼は戦後、どのように生活を送ったのか。
私の調べ方が悪いのか、インターネットでも答えらしい物を見つける事ができなかったため、疑問が残ってしまい残念に思った。


この作品は、「良いドイツ人(アーリア人)」を中心に描いていた。彼らのようにユダヤ人を保護し、ナチに静かな抵抗をしていたドイツ人がいた事は事実であり、それはしっかりと記憶されるべきだ。
しかし、この「良いドイツ人」だけに注目をし、ナチが行ったユダヤ人迫害を小さく記憶し直す、迫害など存在しなかったと主張するなど、歴史修正主義者の声が大きくなる事は、絶対に避けなければいけない。

私は、この映画がそのような行動を助長させるなんて思っていない。
しかし、この作品を見る人は、ある程度の歴史の知識と、メディアリテラシーを持っているべきだろう。そして、この作品に留まらず別の作品を見るなど、ナチやジェノサイドについて学び続ける必要があると考える。

もちろん、映画をフィクションとして楽しみ、学びなどには繫げたくないと考える方もいるだろう。その方々を否定する気は全くないし、むしろ私が変わっているのかもしれない。
ただ、この作品を見て、「フィクションだから」と言い、考える事を放棄する人が増えないと良いなと、知識が無い人間なりに願ってしまった。
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