odyss

新聞記者のodyssのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
1.5
(以下、某映画レビューサイトに投稿したものを、最初だけちょっと変えて再録します。某サイトは今は消失していますので、ここでしか読めません。
この映画、なんだか知らないけど、その後日本アカデミー賞の作品賞と主演男優賞と主演女優賞もとっているようだけど、主演男優賞はともかく、作品賞と主演女優賞については「冗談でしょう?」と言いたくなってしまった。日本の映画界ってレベルが低いんだなと痛感させられた出来事でした。
あ、本田翼ちゃんの登場映画を紹介する企画の第5弾でもあります。)

アホンダラ!!
そう叫びたくなるほどダメダメな映画でした。

アメリカでは新聞やテレビ報道を材料にした優れた映画がいくつも作られています。
真相を追求するマスコミ、真相を知られたくない政府・その他。
その攻防戦がリアルに描かれているからこそ、アメリカでのこの種の映画は秀作になる場合が多いのです。
念のため言っておけば、いつもマスコミが勝利するとは限りません。マスコミが敗北する場合もある(「ニュースの真相」)。

さて、この映画です。
アメリカ映画の上記のような秀作に倣った充実した作品を期待して映画館に足を運んだのですが、完全に裏切られました。

この映画は報道をほとんど描いていません。
ここにあるのは単純なプロパガンダだけです。
冒頭から東京新聞だとか、NYタイムズのファークラ―だとかの、或る種の報道姿勢で目立っている人物がテレビ映像の形で出ていて嫌な予感がしたのですが、それが当たってしまいました。

いったい、この映画は「ちゃんとした」新聞記者を描いているでしょうか?
シム・ウンギョン演じる新聞記者は、ファックスで送られてきた情報を頼りに、内閣府が大学設置をもくろんでおり、そこに危険な要素があるのではないかと調査を始めます。

そこまではよろしい。
ところが、です。その情報を得て彼女のやっていることは、到底新聞記者の名に値しないことばっかりなんですよね。

これって、ないよ。
内閣府が作ろうとしているのは名目上は医療大学ということになっている。
そして大学である以上、その大学を立ち上げようとしている人間は内閣府でも民間人でも構わないのですが、最終的には文科省の審査に通らなければなりません。

文科省の審査に通るためには、漠然とした設置目的だけでは到底足りません。
設置場所やそこに立てる建物の見積もり、さらにはその大学で主要な立場に立つ教授の具体的な氏名など、かなり突っ込んだ書類を用意しなければならない。

とすれば、です。
新聞記者が調査報道をしようとするなら、その医療大学で教授に予定されている人間は誰なのかを調べて、その人物に探りを入れてみるとか、大学設置場所の土地の利権問題はどうなっているのかを調べてみるとか、やり方は色々あるはずなのです。

ところが、この映画では新聞記者たる彼女が何をやっているかと言えば、ネット情報を探ったり、直接関連のありそうな官僚に質問をしたりするだけなんですよね。

そもそも、この映画では偽装工作をしようとしている高級官僚がニセ情報をネットに流すよう指示したりする場面がいくつも出てきますが、これも相当怪しいと思う、マスコミが、誰が発信したのか分からないネット情報を鵜呑みにするわけがない。そんなことは官僚だって先刻承知ですよ。そういう基本的なことが分かっていない映画なんです。

何にしても、この映画での主役の記者は、記者の名に値するような行動はとっていません。
そこがこの映画の致命的な欠陥。
新聞記者が様々なやり方で真相に迫っていくのではなく、情緒と、高級官僚は悪人というステレオタイプ的な描写。そればっかりなんです。これが「新聞記者」なのだとすれば、新聞は信用するに足りないと言わなくてはなりません。この映画作りを東京新聞が支援したらしいけど、東京新聞にとっては読者を減らす効果しかないでしょうね、お気の毒様。

あと、主役の新聞記者は情報を提供してくれたらしい官僚が自殺したとき大泣きするのですが、あの場面はよく分からない。私はてっきり、彼女は自殺した官僚の隠し子だったのかと思いました(笑)。だって、あの時点では自殺した官僚が情報提供者だったということすら確定していなかったんですよ。脚本のお粗末さが露呈している部分でしょう。

この映画で唯一良かったのは、若手官僚である松坂桃李の奥さん役の本田翼ちゃんでした。私も翼ちゃんを奥さんにして甘い生活を送りたかったなあ(笑)。
odyss

odyss