東京新聞の望月衣塑子記者がモデルになった作品だが、彼女の凄まじいほどのエネルギーはほとんど表現されておらず、なぜ片言の日本語の主人公を設定したのか疑問が残る。勿論、シム・ウンギョンの演技は素晴らしかったが、実在の望月記者の取材力には程遠いのだ。
別にリアリティを求めているわけではないのだが、実際に記事が書けるのかと疑いたくなるレベルなので、そっちの方が気になって仕方がなくなってしまう。後半では、都市伝説レベルの生物兵器研究の大学新設という陰謀論が出てきたのには、さすがにずっこけた。いきなり非現実的なテーマに切り替えられたので、一気にフィクション感が出て冷めてしまった。二時間弱で日本の政治権力やその問題、メディアの在り方を分かりやすく表現するのは難しかったのだろうか。
全然違う話になるのだが、先日、歌手のリナ・サワヤマが、英国の賞レースに英国籍が求められることに疑問を呈し批判を受けていた。一方、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞が、韓国籍のシム・ウンギョンに与えられたことは、日本語レベルは置いておいて、良いことだったのかなと思う。観ようと思ったのはそこから。
右や左といった価値観ではなく、真実を追求して権力を問いただす望月記者に、もっと光が当たれば日本も変われる可能性があるのではないか。
