朝田

屍人荘の殺人の朝田のレビュー・感想・評価

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)
1.2
何から何まで目も当てられないほど酷い。おそらく脚本の構造から言って「フロム・ダスク・ティル・ドーン」的な作品を造りたかったのだろう。しかしタランティーノやロドリゲスのように映画に対する敬意や教養を今作の造り手は持ち合わせていない。結果としてホラーとしてもミステリーとしても中途半端かつ未熟な作品に仕上がっている。冒頭からマトモなショットや役者の顔を撮る気はない、と言わんばかりの乱暴かつ大量な切り返しの連続にもう席を立ちたくなる。このショットのリズム感が終始続くため、単調な上にゾンビとの攻防戦のシーンもまったく緊張感が生まれない。山戸結希やトニースコットのように高速でカットを割る手法が活かされるのは決定的なショットが撮れる作家だけなのだという初歩的な事を理解できていない。また、同じようにカットを大量に積み重ねる中島哲也のように突き抜けたプロットの強さや暴力描写のキレも見られない。あらゆる意味で中途半端。語り口もあまりに拙い。個性的なキャラクターを登場させないと話を進められないのかと言いたくなる。人物が登場する際に自分の過去を唐突に語らせる作劇には辟易。しかも終盤などはほとんど比瑠子のナレーションと回想シーンが積み重なるだけであり、映画的な見せ場として一切成立していない。昼ドラを見ているような気分にさせられる。しかもミステリーとしてもトリック自体が単なる後付けな上に、説明的なカットを積み重ねるため何一つ驚きがもたらされない。役者がギャグを放つ際に珍妙な効果音をつける演出も、ひたすら薄ら寒い。こうした演出や語り口を含めて、一昔前のドラマのような手法が映画として通用すると信じて疑わない造り手にはただただ呆れる。「ストレンジャーシングス」や「ブレイキングバッド」のように映画顔負けのクオリティを持った最新のドラマを、日本のドラマの作り手は一切チェックしていないのだろう。観客を見下し、映画を見下しているとしか思えない、日本のエンタメの悪い所を全て積み込んだ地獄のような映画。浜辺美波のチャーミングさだけが救い。
朝田

朝田