むらむら

行き止まりの世界に生まれてのむらむらのレビュー・感想・評価

4.2
ザックが特に印象に残った。彼は紋切り型の人生を選ぶ人々の弱さを指摘している。自分の生き方を正当化しようとする意図を差し引いても、彼が与えられた規範やレールを拒絶する強さを備えていることは事実だと思う。その強さによってgapに落ちていったように見えた(主張してた)彼が、人生が苦しいのは自分がクソなせいだと弱さをさらけ出しているシーンはみててつらかった。

他にもつらいシーンはたくさんあるのだが、行き止まり感が飽和しそうになると必ずスケートボードのシーンが挿入される。その圧倒的な開放感による浄化作用には驚かされた。

ドキュメンタリーだと作品と鑑賞者が地続きというか、フィクションとして捉える逃げ道を塞がれるような独特の重さがあった。本作では弱い人間、環境の被害者としての人間に強くライトが当たるので、登場人物より環境的に恵まれた鑑賞者は自分が恵まれていることに対する負い目を喚起される。さらに作り手が登場人物に含まれることにより、鑑賞者は負い目への補償としてこの作品を過剰に高く評価してしまいやすい...と感じた。

とはいえスケボのモチーフのおかげか、嫌らしさは全く感じなかった。

たまたまニーチェを読んでいたこともあり、環境の格差による負い目や反感について考えさせられた。人間はどの点においてまで平等であるべきかという道徳観の問題に繋がると思う🏂
むらむら

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