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行き止まりの世界に生まれてのauchanのレビュー・感想・評価

4.1
わかりやすく奇跡の映画。

抱えているものを反芻し続ける人物を映す。それでいて希望が満ちている。ここまで幸せな映画はないという気さえする。

華麗に過去と現在と未来の中を行き来しながら物語は進む。どの時間も同じカメラが、同じ親しさの距離で記録している。隠し事のできない距離でその時めいいっぱい生きていることを捉えたショットは時間や画質で断絶しない奇跡的な繋がりがある。

あまり多くみてないが、見たことないドキュメンタリーのその先とも言える部分がみれた。

高校時代つるんでいたコミュニティがバラバラになりそこへ会いに行って、そして自分の問題も取り上げ、批評する。
皆、恐れを持ちながら臆していない。カメラがあることを辞めようとしない。大金でも貰っているのかと疑ってしまうほどの繋がりがある。ら

カメラによる記録をセラピーだと考えているというあの魅力的すぎる人物。詳しくないので、それがどのような働きをするのか分からないが、彼のカメラに対する自然さというか演技は素晴らしい。そこには落とし穴もあるが。
そしてカメラが10年間何を意図していたかという恐ろしい事実を告げるあの瞬間も震えた。

あの堕落を選択し続ける人物の自省にこの記録は有効だろうと思った。あそこまでカメラの前で話してしまえる勇気を持てたあの瞬間は跳躍の前兆だろうと信じる。

カメラを向けることは大きな針を向けるようなものだと思っていたが、このいつでもカメラをどけてハグしても一切問題ないようなカメラはなんだろうか。

撮り忘れはないだろうと確信できるくらいに多くを映し、効果を加えて演出している。強固な骨格を備えた、スタイルの映画ではないが熟練のバランス感覚である。
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