MasaichiYaguchi

ばあばは、だいじょうぶのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ばあばは、だいじょうぶ(2018年製作の映画)
3.9
楠章子さんのベストセラー絵本を「キセキの葉書」のジャッキー・ウー監督が冨士眞奈美さんと寺田心くんとのW主演で映画化した本作は、2025年には患者が700万人を超えると言われる「認知症」をモチーフにしている。
この「認知症」は、色々な原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりした為に様々な障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態のことを指す。
具体的な症状としては、直前に起きたことも忘れるような記憶障害、筋道を立てた思考ができなくなるという判断力の低下、時間や場所・名前などが分からなくなる見当識障害を起こしたりする。
これらの症状によって鬱や無気力になったり、逆に異常行動、徘徊、興奮、攻撃、暴力をしたりする。
もし最愛の人が「認知症」になってしまったらという、誰にでも起こり得る問題を本作は、自分を可愛がってくれる祖母が発症しておかしくなっていく様を孫の視点で浮き彫りにする。
この祖母・中前スズエを冨士眞奈美さんが、その孫の中前翼を寺田心くんが演じ、2人によるエモーショナルなドラマが丁寧に繊細に綴られていく。
前半にある祖母と孫の温もりある交流が、「認知症」の症状がはっきりと出始めて変わっていく過程が観ていて切ない。
この作品では、その「症状」を抑えて描いていたと思うが、現実には「地獄」のような日々を送っている家庭もあると思う。
やがて堰を切ったように起こった「或る出来事」。
この「出来事」を通して分かったスズエの“思い”が胸を突いて目頭が熱くなる。
「認知症」と向き合った本作を観て思うのは、家族の支えは勿論だが、社会問題化したこの病気には行政を交えて地域ぐるみで取り組まなければいけないということ。
試写会後の舞台挨拶で中国と台湾での上映決定が発表されたが、高齢化が進む同じアジア圏の人々が、本作に対してどういう思いを抱くのか楽しみだ。