Basco

スウィング・キッズのBascoのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.7


主人公にとってタップダンスを踊ることだけが生きていることを実感できる瞬間。自分が本当の自分である瞬間だった。
そんな少年の純粋な踊ることへの渇望が輝いてみえた。
そこには間違えなく言語も国籍も人種も全てを超越する力が間違えなくあった。

踊るシーンの足元にフォーカスしたショットや飛び散る水溜り、泥、汗、涙、弾ける床など全ての演出が作品やダンスへの躍動感を表現する効果があった。

ラストはまさにファッキンイデオロギーのタイトルの通り、死を覚悟したからこその生きている最後の時間として、全力でダンスを表現する主人公の姿に心を打たれた。踊りながらキスをするシーンも全てが死への覚悟の表れだったのだと思う。

兄との家族愛、異国人ジャクソンとの友情も同族同士の友情も好きな人への愛も全てが一瞬にして奪われる。
そんな主人公の純粋な気持ちを踏みにじるような戦争の生々しさや、痛みがどうしようもなく、降りかかってきた。時代だけがあまりにも悪かった。涙が止まらなかった。
観客はバッドエンドであると想像できてしまうからこそ最後のタップダンスが全ての抑圧から解放されたかのように輝いてみえたのだろうけど、あまりにも悲しすぎる。
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