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マルモイ ことばあつめのmaiのレビュー・感想・評価

マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)
4.6
わたし的、今年のベストムービーに確実に入るなという作品でした。
歴史…特に戦争を絡めた歴史映画って暗くなりがちだし、観てて辛くなるシーンも頻発するイメージなんですけど、そんな絶望的な状況の中でも信念を貫き通した姿の凛々しさというか素晴らしさに涙でした。


すごく良かったです。
されたことを忘れずに記憶するのも大事だけれど、したことを勉強することも大事だと思いました。
「語り継ぐ」という意味では、圧倒的に戦争時一般市民だった人たちからの話が多くなります。それは当たり前です。
重要な役職についていた方々は口が重たくなるのが自然ですし、既にお亡くなりになってる方がほとんどです。その方達のやったことは責められるべきであるけれど、その人の罪ではないというのも確かです。
本意か本意でなかったか…そんなの明白です。
しかし、一個人として不本意な扱いを受けた普通の生活と、国として他者に不本意さを強いたこと。どちらも覚えておくべきであるなと痛感しました。
ふとすると「戦争によって生活が奪われたんだ、あんな辛い思い二度としないように平和を保とう」だけで完結してしまいがちです。
でも忘れてはいけない、加害者として覚えておかないといけないのは「同じくらいひどいことを日本もやった」ということです。そこに人の命の有無が関わるか関わらないかは影響しません。
他者が守ってきたアイデンティティでもある文化を潰そうとした事実は、加害者国ならば知らなくてはいけないと思いました。
「私の国」という地域もあれば「私たちの国」という地域もある。その言葉ひとつとっても、国の方向性や今までの歩みが違うというのが浮き彫りになります。
それほどまでに「言葉」というのは強い力を持っています。

言葉を正しく使う、文化を重んじるというのは最終的には形だけではダメで、そこに対する真摯な姿勢や意欲がなければ意味をなさないと感じました。
共同体がいいか悪いかはさておいて、国がどう発展して自分はそこでどう生きてきてどう生きていくのかを示してくれるものこそが文化だと思います。自分の属する社会の基本指針であり根底に流れているものです。

学も同じで、ただ知ればいいという知識もあるけれど、まずはそれを学び取ろうとする姿勢があって初めて自分の中で意味をなします。
形から入ることがまずは第一歩だけれど、そのあとの学を為すというのはまた別の問題なんだなと思いました。

そして、それを守ろうとした人たちを演じた役者の方々の演技力…!
素晴らしすぎる。
また、学者と一般市民(今回はちょっと荒々しい人たち)の架け橋となるのが「学問」「文化」というのも良いですね。
「貧しいからと下に見るな」という言葉は深くささりました。
キム・パンスは学問自体の重要性を軽んじていましたが、それは一重に触れる機会がなかったからです。一方でジョンファンは、学問や文化の重要性を知りながら、それが「国」をまとめる力を持つと信じながらも人と人との間に醜い境界を作っていたのです。憎むべきは根本であるのに、貧しくて理解できない人は国を軽んじるのだと決め付けていたのです。
そこが和解されてく過程も素敵でした。

本当、エンタメとシリアスのバランスも映画の完成度も高い韓国映画って素晴らしい。
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