えな

天気の子のえなのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.3
観てる途中は「そっち方面に行ってしまったか…」という気持ちがわいて落ちつかなかった。
アニメアニメしすぎて好きになれないキャラデザ、ファンタジー要素は許容できてもドタバタ感がますます一般的なアニメ映画ぽくなり、いよいよ哀愁のようなものがなくなってしまったと感じ、さみしかった。
なのに、終わって、ぜんぶおわって、劇場を出てから結末について考えてたら涙がとまらなくなった。世界はもともと狂ってるって、そうかもしれない、その選択は狂ってる。だれか少女が「新海誠ってすごいね」と言ってる声が聞こえて、それなと思った。
なにに感動したのかじぶんでも説明しづらいけれどたくさんのメッセージを感じた。生きてくうえで日々感じる息苦しさや苦悩を代弁され続けてた気がする。じぶんのために生きる強さをもつほだか。とりあえず本作公開が決まってから公開初日(鑑賞日)までなんとかネタバレに触れないように、予告やポスターすら見ないようにしてきた。主人公の性別すらわからない状態で鑑賞までもってきた苦労とやり遂げた達成感(?)とくに小説版が前日にでたのでSNSも見ないようにしたり頑張ったけど、観終えて思ったのは「ネタバレとかそういうものじゃない」でもなにも知らずに観て良かった。
運命にあらがう、すべてをすてても君を選ぶという純粋な狂気はたまらない。
監督が言ってた賛否両論というのはそういうところかな。作品としてのレベルは高いけれど、個人的な不満として今作はあのグラデーション描写が少なかった。独特の星空もなかったと思う。新海誠の描く空や自然や東京の無機質の中のきらきらした一瞬が好きなのでそのへんが少なくて心に残るような色合いもなくさみしい。
雨の描写はたしかにリアルだけれど胸を打つ雨は言の葉のほうだった。空の中ももうちょっと細かく観たかった。謎は謎のまま、伏線回収などもない。今作はあまり深い設定がないのかなと感じた。でも花火のシーンはぐっときた。観たのはIMAXだけど色が薄かったのでモニタの濃い映像でまた観たい気もする。瀧くんがたぶん出てた。三葉の声よいなあ。前作のユキノ先生より堂々と出すぎな気もしたけどうれしい。というか登場人物多い。メインぽい刑事が2人いたり、ばあさんが2人出てきたり、他にも天井画のところのじいさんと占い師同じこと言ってるし、じいさんの孫もいらないし、猫もいらないような…。
君の名も人物多かったけれどラーメン屋のおじさんなど脇役も細かく人物の背景が設定されてる感じがした。今回は個性なさげな役がとても多く、いろんな要素をつめこんだお祭り状態。バニラはいいんだけど、有名な曲や商品、ネットサービスなど全編に渡って次々に出されると、一応ファンタジーなのにオトナのスポンサー事情があるという現実に引き戻されてしまう。おまけ要素そんなに要らない…。「叱られる作品」「賛否両論かも」と自称したわりにめりはりがなかった。君の名はからのファンの期待は裏切ってない良作。でも秒速あたりからのファンのことも次回は思い出してほしいw
けれど大人の度をこした非情さがスパイスになってたり、ほだかがなぜ家出をしたのか描かれていないのもうまい。切り取った時期の恋やがむしゃらさが青春の1ページなんだけど、その内容が狂気なのも好き。
やはりもう一回観たいかも。小説版読もうかな。

(追記2021年1月)2回目の鑑賞。1回目より素直に面白くてボロ泣きした。1回目は、日清バイトルYahooといった明らかなスポンサー描写がノイズで気が散った。キャラデザがテラテラしすぎだったり、きれいな東京の景色がほとんどない。って個人的な不満要素もあらかじめ知ってたらそこに対して目を瞑れるから2回目は楽しめた。やはり登場人物多すぎで刑事2人も要らないんだよなー。あと、野田洋次郎大好きだけど歌がうるさく感じる。曲を知ってるとBGMとしていけるのでそれも2回目の方が良し。三浦透子verは1回目からよかった。野田洋次郎の曲は女性が歌うと映える。内容は現在のコロナ禍とシンクロして感慨深いものがある。カップルや若者もレインコートを着ているひとが多くて現実のマスクのカップルを思い出す。新海誠の過去作への偏った思い入れを一旦よそに置いておけば本作も名作だと感じる。今更だけどあのリングほしい。
えな

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