MCShinotch

天気の子のMCShinotchのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.5
猫の造形が気に入らない。

主人公の童貞が、特殊で重たい境遇を背負わされているヒロインを救済することで自己肯定する契機を得るという、よくある感じの物語。
実写を超える日光や水の描写、MV的演出、くどいまでのモノローグといった金太郎飴のように現れる新海印とあいまって、途中まではウワー出たよ感、やってんなあ感が非常に強い。

しかし従来のセカイ系が、ヒロインの救済を世界の救済と直結させることで主人公の矮小化されたマチズモに対する言い訳を提供していたのに対し、本作では、ヒロインの救済はむしろ世界を悪い方向に向かわせることにつながる。
3年雨が降り続けたら経済危機とか食糧危機とか起きるでしょ普通。

そしてこのジレンマの中で主人公が下すヒロイン救済&東京沈没とかいう決断は、「世界は元々狂っているから」という根拠に支えられる。
これ、私には、世界(=結婚生活)が狂っているから、俺は不倫する(ヒロインを救う)ぜというステートメントに見えました。

新海の大勝利ではないか。

この手のオハナシの構造はもはや不快なレベルなのですが、やっぱりもう新海は私小説とかいうレベルを超えてガチで童貞主人公に自分を同化させているんだなとわかると没入感変わるし、今後の作品も楽しみになってくる。

終盤、須賀に向けられる言葉「あなた泣いてますよ」にハッとさせられる。
あれはセカイ系を唾棄すべきものとして扱ってきた我々シネフィル気取りに向けられた言葉なのではないか。

正直泣きましたもん。
MCShinotch

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