カズミ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのカズミのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

「ホラー映画やん」と、終始笑いが零れるほどのオカルトっぷりを発揮している異色のMCU映画。と思っていたら、カルト映画を多く撮っているサム・ライム監督作品と知って納得。

元々マーベルはドクター・ストレンジから入ってものの見事にハマった勢なので、二作目にも大きな期待を寄せていた。
アベンジャーズキャラの中ではワンダも大好きで、今作は制作前から「ワンダビジョンは必須」と謳っているのを見て、ドラマもしっかり履修済み。
結果、本作を見た感想としては、『ドクター・ストレンジ』の体をとった『ワンダ・ヴィジョン』2だな、といった印象。

魔法使いのヒーローが特異体質の少女を魔女から護るオカルトアクションSFコメディ、と字面にすると何のこっちゃわからないが、割と雰囲気は表せているように思う。

特筆すべきは、やはりワンダ。というか、もうこれはワンダのための映画と言っても過言ではない。
元々ヴィラン側から登場した彼女が、アベンジャーズと関わる中で、ヴィジョンという愛する人を得て、ヒーロー側へ移り変わり、過去の傷を少しずつ癒していく様をずっと応援していたというのに、『インフィニティウォー』であの仕打ち……
ドラマの中でも、困難が待ち受け、どうしても自業自得の一言では納得できない状況に追いやられた上での、今作だ。

序盤から完全なるヴィランとして登場するワンダの姿にただただ胸が痛む。もはや戻ってこれないほどに、ただただ人を殺めていくが、その行動理由が家族と暮らしたいから、という極めて純粋なものであるのだから切なすぎる。
一昔前のオカルトホラーに出てくる魔女的な描かれ方をされた上に、マルチバースの愛する息子たちには「魔女だ!!」と恐れられ、敵と見なされ、怯えられる始末。同じ顔なのに、彼らには決して母親と認識されない。
その後、諭され反省すると共に禁断の書と心中だなんてやるせなさすぎるお願いもうやめてあげて少しでも報われてお願いします。

と、異常にワンダに感情移入してしまったが、今回はマルチバースの複数移動というとんでも設定が加わったがゆえに、まさかのプロフェッサーやファンタスティックフォーのキャラなど、他マーベル作品と繋がるサプライズもあり、テンション上がりまくりだった。
そもそも原作ではマグニートーの娘であるワンダが出ているのだから、これはいい機会だったのかもしれない。
ちなみに、イルミナティにいたカーターがスーパーソルジャーとなった世界線はディズニープラスの『ホワット・イフ』第一話で描かれているので、そちらも並行して観るのも面白いかもしれない。イギリス国旗を胸に抱くキャプテン・アメリカ、という情報の大渋滞が楽しめる。

ドクター・ストレンジを主役に据えているわりに、彼の印象が薄いような気もするが、ゾンビストレンジや闇落ちストレンジなど、今作では様々なびっくりストレンジを拝むことができる。
……やっぱり今までの我らがストレンジ先生への感想がちょっと、今は、浮かんでこないのだけれど、あの、かっこよかったはずだ。多分。音符の戦闘シーンや悪魔を使役するシーンなんかは大いに笑った。

映画終盤で第三の目が開いちゃったり、マルチバースを移動できるキャプテン・マーベルもびっくりなチートキャラが登場したり、とこれからどんな方向に進んでいくのか欠片も想像がつかなくなってきたが、個人的にはどうしてもワンダをあのまま死なせたくない。あの、新たに生まれたヴィジョンとの関係はどうなるの。このままヴィジョンだけ登場する、なんて話になったら、とんだロミジュリ展開すぎる。報われて。

まったく予想外の方向からきた映画でしたが、オカルトもSFも好きな自分としては、一本の作品として大いに楽しめました。
カズミ

カズミ