ガス欠ポルシェ

黒い司法 0%からの奇跡のガス欠ポルシェのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
2.5
主人公に欠点が無いのが欠点。

この主人公の障壁は、人種差別と司法の欠陥、他人の愚かさといった、彼の外側の問題であって、彼の内側(内面)にはありません。
確かに彼自身も様々な理不尽な壁にぶつかって怒りを感じたり、驚いたり悲しんだりしますが、どれも当然の反応と言うべきものであって、彼の人格的・能力的な欠点というものは無いように思われます。
それどころか、大学を卒業したばかりの新人弁護士なのに、さすがハーバード卒と言うべきか、自分よりはるかに経験を積んだ相手とほとんど互角にやり合っています。ポジション(立場や地位)的なハンディキャップはありますが、彼の能力は最初から十分に備わっていて、壁にぶつかったらすぐにそれを越えてしまうのです。

そういった訳で、この映画には主人公の人間的な成長の描写がほとんどありません。信頼も言葉巧みに勝ち取っていきます。彼は最初からあまりにも「正しい」のです。

設定も含めて衝撃的な事実は多数ありますが、それらは舞台装置であって、メインは舞台の上で行われる人間ドラマです。
そう考えると、主人公はむしろマクミリアン(死刑から開放される人)のほうだったのかなと思いました。

シン・ウルトラマンを見た後だったので、こちらは遥かに人間の描写がよく出来ていると感じました。