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黒い司法 0%からの奇跡のEDDIEのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
4.8
涙が止まらなかった。被告人と家族のように接し、無罪を信じて脅迫にも司法の卑怯な慣習にも屈しない弁護士の勇気に感服。やり尽くされた実話に基づいた黒人差別の裁判劇をドラマティックに演出。司法の隠蔽工作は不愉快極まりない。

これは凄い作品でした。黒人差別テーマは『グリーンブック』をはじめとして昨年たくさん公開されましたし、冤罪をテーマにした作品も数多いです。ただここまで弁護士の奮闘が報われずに悔しさを感じ、そこからのラストの展開に至るまでの感動と心を揺さぶられたのも久しぶりかもしれません。
それもマイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスの会心の演技あってこそでしょう。マイケルはジョギングのシーンが『クリード』かと見紛うぐらいでしたが(笑)

「アラバマ物語」の舞台になったアラバマ州。皮肉なのか物語の内容は、白人女性の性的暴行容疑で逮捕された黒人青年を白人弁護士が弁護するというストーリー。
この物語は映画鑑賞後に調べたのですが、本作では「アラバマ物語」のストーリーと酷似した内容ながら、同じ轍を踏む司法、検察たちに余計腹が立ちました。

そして本作も事実に基づいており、「アラバマ物語」とは家族持ちの中年の黒人男性を若手の黒人弁護士が弁護するというキャラの立場の違いぐらい。
本作では当時18歳の白人女性が殺害され、容疑者として捕まり死刑宣告まで受けてしまったウォルター・マクミリアンを、弁護士ブライアン・スティーブンソンが冤罪を信じて弁護することになります。
ウォルターが有罪判決になったきっかけはたった一つの証言のみで、彼の無罪を決定づけるアリバイ証言はすぐに見つかりますが、それでも覆せないほど司法が腐っていました。それでも諦めず何度も何度も挑戦するブライアンの信念ある行動に心を動かされ続けました。

さらには仕事のパートナーであるブリー・ラーソンが演じるエバ・アンスリーの存在も大きかったですね。彼女も家族にすら危険が及ぶわけですが、ブライアン同様信念が強く彼を支え続けます。それでいて彼女が終盤にブライアンにかける言葉がとても良かった…。
対する検察のレイフ・スポール演じるトミー・チャップマンが本当に憎たらしい。だけども立場が変わってきてからの彼の家族と彼の目線、表情が素晴らしかった。彼の検察としての仕事ぶりは許されませんが、結果的な判断と俳優レイフの演技はとても印象的でした。

終盤になるにつれて涙が止まらず、ブライアンの奮闘が身を結んだ瞬間やブライアンとウォルターの関係性を見るにつれて感情の高まりが止まりませんでした。
ずっと憤慨する気持ちが抑えきれず、映画鑑賞中にスクリーンを睨んでいました(笑)テーマの重さを感じながらも、この事実に目を背けてはならないという考えとブライアンという男の信念に敬服する想いなど、とにかく胸に深く刺さった作品となりました。

※2020年劇場鑑賞45本目
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