しちれゆ

12か月の未来図のしちれゆのレビュー・感想・評価

12か月の未来図(2017年製作の映画)
4.0
フランス随一の名門アンリ4世高校からパリ郊外の教育困難中学校に赴任を命じられたフランソワが出来の悪い子供たちに悪戦苦闘しながらも彼等に寄り添い心を通わせていく素敵な物語。
フランソワは今まで育ちのいい優秀な生徒だけを相手にして″ちゃんとした″狭い世界で生きていた。でも今度の学校はアフリカ系移民や貧困層の子供たちばかりで皆学ぶ意欲なんか全然ない。彼が最初に選んだ教材は″ラ・ミゼラブル″、大丈夫か?と思ったけれど生徒たちは次第にこの物語の登場人物に惹かれ始める。学ぶ楽しさや知る喜びに目覚めていく子供たち。そうそう、″勉強″って楽しいものなんだよね(←大人になってわかったこと…) フランソワは40代?歳を重ねた人の子供たちを包み込む豊かな心。この作品の素晴らしさはフランソワ役のドゥニ・ボダリデスに負うところがとても大きいと思う。
学期の終わりに『おやつ会』をしたり春の遠足でヴェルサイユ宮殿に行ったり、楽しいこともたくさんあった。自撮り事件もあったけれど。
「私は笑うように泣いている」~ 最後の子供たちの合唱″Si Maman Si″が美しい。そして合唱を聴いている親たちの、子供を見つめる愛しそうな眼差し、移民でも貧しくても子供たちは愛されて育っている、今は。でも子供たちの未来はどんなだろう。幸せにはなれないかも、と思う。
問題児セドウを通して現代フランスのリアルを感じさせてくれる作品でもある。
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