touch

王国(あるいはその家について)のtouchのレビュー・感想・評価

4.7
"わたしはもう裁かれている"
* * *
奇跡のような大傑作。参りました。今年ベストです。
.
まず元の話が恐ろしく良くできていて面白い。のに、そんな秀逸な脚本を大胆にもシーン別でバラバラに切り出して、リハーサルを反復して、それを再構築する。
こんなにも実験的で、しかもその企みが成功しているメタフィクション作品は観たことがない。
.
リハーサル映像を繰り返し見せられることで、観客である自分にも台詞の一言一句まで浸透していく感覚に。
すると次第に言葉の意味は消えて、声のトーンや視線の動き、表情筋の微細な運動、ニュアンスの違いが鮮明に立ち上ってくる。
これは「演劇(あるいはそれを撮影した映像の可能性)」を探る映画だ。
.
兎にも角にも脚本の強度よ。
ひとつひとつのことば選びの丁寧さ、話運びの自然さが、掛け合いをより生感あるものに仕立てている。
細断されたどのシーンもしっかり見応えがある会話劇になっているお陰で、何度も同じシーンを見せられたとて、退屈に感じない。
これは安易に真似したら絶対に大事故になる…
touch

touch