あでゆ

アスのあでゆのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.4
アデレードは夏休みを利用して、夫と2人の子供たちと一緒に幼い頃住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪問する。彼女は友人一家と落ち合いビーチへ出掛けるが不可解な出来事に見舞われ、過去のトラウマがフラッシュバックする。やがて夜になると、自分たちとうり二つの不気味な4人組が家の前に現れる。

「格差社会」というメッセージそのものはわかるのだが、正直個人的に強く打たれるメッセージではなかったために、ピンとこなかった作品。
メッセージについても、同じ格好をした人間が地下でひどい生活をさせられているというのはわかるが、そもそもこの話って別に彼らがいなくても上にいる人間たちは生活ができるのでは?

同じことをやるのであれば、下の人間たちによって上の人間たちが生かされていないと意味がない気がするし、上の人間にとってはただのいい迷惑で逆恨みだよな。
『ゲット・アウト』のときもそうだけど、ジョーダン・ピールってSF的な説得力は非常に弱いので、いちいちラストの方で何が起きているかって細かい話はそんなに説明しなくて良い気がする。

それにラストのアレに関しても、物語のどんでん返しに悩んで唐突に加えたサスペンス、という気がしてノレないし、「格差社会」というテーマが有耶無耶になってしまっている。
『ゲット・アウト』はうまく観客の黒人に対する固定概念を逆手に取った逆転が見事だったのだが、今回の物語は見えてくるテーマが冒頭で分かりきっている。最初から何がやりたいかのメッセージが明確すぎて物語的な起伏がなかったために正直退屈だった。

あと、格差を訴えるのであればそれは白人の中流階級であるべきな気がするんだけど、もはや黒人も中流階級に収まっているよねということなんだろうか。そのあたりの背景は正直良くわからなかった。

とはいえ、物理的な描写を排した精神的なホラー演出は見事だと思うし、地下で何が行われていたかの回想も不気味でセンスがあるなあという感じだった。中盤の例の曲を使ったコメディタッチのスプラッターシーンなど、ホラー一辺倒でないところも絶妙だ。
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