スローターハウス154

ソヴァージュのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

ソヴァージュ(2018年製作の映画)
3.9
2020/5/1

野良猫のような生き様に憧れたことはあるか。あるいはコレは現代のハックルベリーフィンの姿か。
ありきたりだけど、何が幸せなのかは当人にしかわかり得ないこと。誰かを愛するとき、それを考えた上で愛さなくてはならない。愛というのは、相手を縛るということでもあるから。
僕にとって世の中でイチバン怖いのは肉体的な痛み(あるいは不健康)なので、この主人公のQOLに対する無頓着さには恐れ入る。この問題解決能力の無さ、ほとんど何も知らない幼児のよう。明らかに幼少期からの愛情不足、劣悪な環境育ちによるものだと推測。どこにでも、こういう人たちが存在する。
それにしても、フランスの瀟酒なイメエジなんてモノはこの映画で叩き壊される。もちろんこれはフランスの極底辺層を映した作品ではあるけれど、森の小道にあんな風に身売り達がたむろしていたり、アスファルトの上の水を飲んだり、ドラッグには手を出すのがフツウ。そういった光景が当たり前のように見過ごされていることにカルチャー・ショック。周囲の常人は「それが彼らの生き方なんだ」と納得しているんですかね。良く言えば、“自由の尊重”とも言えるのかもしれない。しかしこういう底辺層に適切な手当てをしない国には明るい未来はないだろうと思います。

ちなみに、尻が痛い映画暫定1位として個人的ランクインを果たした今作。先日に痔の手術を経ていまだ尻に痛みを抱えるわたくしにとっては、視覚的拷問以外のナニモノでもありませんでした。人類、二足歩行になっただけでも肛門に多大なる負担をかけているんですから、もっと肛門を労らなくてはダメです。

主人公に忍び寄る“ピアニスト”なるレクター博士のようなmadマンもまた恐ろしい。こんなのがリアルに存在するなんて失禁モノです。彼の手にまんまと乗せられてしまう主人公の本能的危機感の無さ。彼がいかに人間的にも動物的にも脆い存在かを物語っているかのようでした。

主演の彼の、もはや演技なのかよくわからないほどいろんな意味でリアルに迫った演技が圧巻でした。