スローターハウス154

ライトハウスのスローターハウス154のネタバレレビュー・内容・結末

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます


画面が白黒であることに感謝したくなるようなほど「汚ねえ...」という生理的嫌悪感のある表現が続きます。それもこれもラストに現れる灯台の妖艶な煌めき、神々しさを引き立てるためだったのかなと思う。
老害を煎じ詰めたようなくそジジイと数週間一緒に暮らさなければいけないなんて、そりゃ気が狂います。ブラックな職場なんかにお勤めになられた経験がおありの方はとくに、このジジイの要素を一つでも満たすような古参兵をご覧になったことがあるでしょう。
何を観せられているんだろうか...という所感で終わりそうだなという予感があったけど、最後まで来てやっとああギリシャ神話ね、プロメテウスねというヒントを得た。
また背景には海版ブロークバック...とまでは言えないがやろうと思えばそういう展開にもできたであろう同性愛的な要素もあったと思う。とはいえあのクソジジイが相手では気が狂ったとしても“無理”でしょうけども...。

ウィンズロウがこの島に来た理由は過去から逃げるためなんでしょうけど、根本的には男性性から逃げるためだったんじゃなかろうか。ウィンズロウはどちらかというと内向的で従属的な性格。そして「きれいな顔」をしている。こういう男性が当時の肉体労働を主とする男性社会でどういう目に遭いやすいか...もしかすると、ウィンズロウが殺した?同僚である男から何か性的な行為を強要されたのかもしれない。
あるいはウィンズロウの隠れた性的志向が同性である可能性。神話にも出てくる人魚の誘惑に最終的に勝ったのは、彼に同性を求める要素があったからかもしれない。とはいえ当時同性愛は御法度でしょうから、本人も自らの性的志向を自覚するわけにはいかなかった。しかしその要素が過去に殺めた男になんらかの形でバレてしまったのでは...そして今回もまた、せっかくこんな遠くにまで来たのにしかもよりにもよってこのクソジジイにもバレてしまった...同性を求める気持ちを認めたくない、だから殺した...のかも。もはや考察を通り越して妄想の域ですが。
でも同性愛はこの物語のひとつの要素であるだけで、もっと広がりのある考察をする必要があるなと思いました。
しかしそんな理屈ばかりを重ねるのはヤボな気がするほど、潮臭くイカ臭くはあるんですがどこかファンタジイな詩情を感じさせるような、不思議な余韻の残る作品でした。