おと

宮本から君へのおとのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
5.0
とにかく、意味がわからないと思いながら宮本と靖子を見つめ続けていた。
思考回路も意味がわからないし、何がしたいのかもよく分からない。本人達も当然何がしたいのか分かっていない。

とにかく常に隣に抗えない事実が横たわり続ける。
抗えないものに対する感情というものを色々と触れてきたけれど、この映画ではまた少し違う。
言葉にするのが難しいが、すぐ手の届くところにある絶望。
どうしようもなく大きな抗えないものではなく、近くにいるからこそ増す苦しみというか…
隣、というよりは目の前。何をするにも正面に居座り続けており、もう何も見えないような。
何と言ったら良いのか難しい。

品性も情緒もなく、ただ本能のまま罵り合う様を延々と見続け、監督のエゴの塊のひどい映画だと思いながら見ていたような気がする。
そして向かえる、エンドロール。
「Do you remember?」と、宮本と靖子の写真。

少し距離を置いた立ち位置で見てしまっていた部分もあった。
そのはずなのに、エンドロールを眺めていると何故か涙が流れてくる。
愛とエゴと血とゴミムシのような二人が突然眩しい。

「俺に全部任せろ」と同時に、「私に全部任せろ」と言っているように見えた。
最高の人間達だ。

意味もわからず感情が揺さぶられるのは、本当に久しぶりだった。
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