おと

辰巳のおとのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.2
かなり良い。
役者陣の演技がとても良い。
辰巳を演じた遠藤雄弥が目のみで感情を表現してしまっているのが素晴らしかったし、その力強さや優しさ、悲しさの表現力の高さに驚いた。
劇中の序盤で「お前は優しい」というセリフが向けられるが、その時点でなんとなく納得してしまう、その説得力がすごいと思う。

迫力重視の一点突破かと思いきや、普段の素の部分が出るシーンが挟み込まれているのが上手いと思うし、そういった演出がされているのが辰巳と葵だけに留められている点もこの二人の物語としてイサギが良い。

それと、小規模な映画にはかなり珍しく、音がとても良かった。
迫力の出るシーンでは拳の音や服の当たる音、周りの物から鳴る音など細かな音がいくつも重ねられて臨場感の演出にかなりの貢献をしていた。
(単純に音量が大きく設定されていて迫力があるというのもある)

臨場感といえば、やはり撮影もかなりのものだった。
緩急があまりつけられていなかったようにも思うけれど、基本的に至近距離での中望遠での撮影、しかも手持ちという暑苦しい絵面が続き、シンプルイズベストといった感じで効果的だったし、情報が入らない事で世間から離れた閉ざされた世界感を演出できていた。
ラストカットはとても情緒的なものだった。
ああいった撮り方はありそうで無かったと思う。

小規模ながら、監督、役者、撮影、音声とプロフェッショナルが揃った作品だと思うし、それだけ力を感じる映画だった。

レオンを思い出す方が多いみたいだけど、個人的には藤井組を彷彿とさせるものだった。
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