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シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢のGTのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

オープニング。間違えて「ゴダールの映画借りてきちゃった?」と不安になるレベルの詩的で哲学的なナレーションと高速で切り替わるカット。よくある「マーケティングの仕方を間違えてる」タイプの映画だとこの時点で悟る。事実フランス版のポスターは日本の物と比較するとかなり落ち着いた雰囲気に仕上がっているし、タイトルも「Le grand bain」(意味は「大浴場」らしい)とかなりシンプルなもの。
オープニングから先もかなり暗い雰囲気で話が進む。全体的に光が少なく薄暗いうえ、登場人物達は皆中年に差し掛かったおじさんなのだが、どの人物も家庭に問題を抱えており、その描写もイヤに生々しい。音楽もあまりかからず静かな雰囲気のうえ、登場人物をバラバラにフォーカスして話を進めるため誰が誰だか混乱しやすく前半は見るのが結構疲れる。
登場人物の一人が「俺たちは負け組なんだよ」というシーンがある通り、シンクロメンバーは皆冴えないおっさんといった感じでその体のだらしなさと動きの不格好さは「人生の悲哀」といった感じを思い起こさせる。そんな彼らが周りに馬鹿にされながらも愚直に頑張る様は、やはり王道ながら胸を打たれるし(キャッチコピーである「人生を舞え。ぶざまにかっこよく」は言い得て妙)、情けないながらもどこか憎めない彼らのやりとりはすごく面白いし愛着も湧いてくる。
ラストのシンクロシーンは今までの無様さとは打って変わって非常に美しく感動的で、これも王道ながら、そのカタルシスは気持ちが良い。大会での優勝したことによって倒産しかけていた会社が遽に持ち直したりするのは流石に出来過ぎ感があるが、実話らしいので文句の言いようもないだろう。ただ個人的には、その功績はささやかなものであった方が、この映画には相応しいと思ったり。
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